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short
Kiss me darling

「キスしようか」
「……は?」


アカデミーの裏庭の片隅。セインが魔法で掘った穴の中。

セインが中で立ち上がっても穴の縁に目線が届かないくらいの深さの縦穴であり、その中に二人で座っていると土の壁と互い以外のものは視界に存在しなくなるようなそんな場所。

ヘンリーが座ったままセインを抱き締め、セインのなんだかんだとそれを受け入れている状況は最早いつもの事だが、そんな中で唐突にヘンリーの唇が紡いだ言葉にセインはぽかんとした。

後ろから抱え込まれているような体勢の為、半身を捻るようにしてヘンリーを振り返ると、にっこりと機嫌良く笑う綺麗な顔。


「…何て?」


これだけの近距離だ、彼の声はしっかりとセインの耳に届いていたのだが、脳の方が理解を拒否していた為そう訊き返す。

引きつったセインの表情に構わず、にこりと笑うヘンリーはご丁寧に言葉を繰り返した。


「キスしようか、セイン」
「……な、何でわざわざそんな事訊くの!?」


美しく、それは艶やかな表情で笑うヘンリーに、セインは思わず声を上擦らせた。

彼とキスをした事がない訳ではない。寧ろ数え切れないくらいにしているけれど、お上品そうに見えてその実強引なヘンリーはわざわざセインに合意を取るような事などほとんどない。

キスをするのならば、いつものようにセインがふと振り返った時にでも、もしくはやや強引に振り向かせてすればいいだけだ。なんだかんだで、今やヘンリーの恋人となったセインだ。それを嫌がったりはしない。

それが彼から同意を求められるパターンなど珍しく、セインはおろおろと視線をさまよわせた。視界に映るのは土ばかりである。


「したくない? キス」
「えっ…、う……」


深い海の底のようなウルトラマリンの瞳が細められ、セインを見下ろす。

その声は「しないの?」などと気落ちしたものではなく、「したくない訳ないでしょう?」と強要しているようなものだったので、やっぱりヘンリーはヘンリーだ、なんてセインは納得してしまう。

する、と伸びてきた指がセインの頬をなぞる。そろそろと妖しげな手付きに、肩がピクリと震えた。


「……い、いつもだったら勝手にするクセに」
「たまにはセインが求めてくれるのもいいなぁ、って」


セインが求める、というよりはヘンリーからの強要である。

そうツッコミたいのは山々だが、セインがそう指摘したところでそれは無意味であろう。指摘したくらいで止めてくれるような相手ではないのだ。

セインは思わずため息を吐き、にこにこと此方を見下ろしているヘンリーを見上げた。

反論は許されない。…尤も、突然の珍しい問いで動揺してしまったが、最終的に反論も反抗もするつもりはないのだ。


「…いいよ、ヘンリー。キス、しようか」
「……かわいい、セイン」


ほんのりと目元を赤く染めながらそう返した恋人に、ヘンリーは大層上機嫌に微笑んで、その上品な笑みには到底似合わない荒々しさでその唇を奪った。















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キスの日。あざとヘンリーさんと、振り回されるセイン。

ヘンリー無自覚ヤンデレでナチュラル暴君とか、何か色々手に負えませんね!(笑) セイン頑張れ、超頑張れwww


13/5/23

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あきゅろす。
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