short
9 ※
「……惣?」
不安そうな依月の声を、唇で唇を塞ぐ事によって封じる。酔った依月は大人しく、抵抗しない。
まだ、最後の一線は越えていない。けれど、此処で引き下がったからといって先程の行為が無かった事になどならないし、もし依月の記憶が飛んだとしても俺は絶対に忘れられないだろう。
それならば、いっそ。
「ごめんな…」
「……」
離した唇の合間から囁く。うっすらと瞼を開いた依月は、俺を見上げて不思議そうな顔をした。
その額を撫で、俺は顔を上げてベッドの周囲を見回した。
ベッドサイドに転がっていた、いつだったか依月が持って来てそのまま忘れて行った、ハンドマッサージ用のアロマオイルを手に取る。これならば、潤滑油の代わりになるだろうか。
俺が押し倒した体勢のまま、ぼんやりと此方を見つめる依月が、俺がマッサージオイルの瓶を手に取るとゆるりと瞬きをした。
「……惣?」
「…あぁ」
名前を呼ぶ声に、意味なく応える。
転がった躰を更にシーツに押し付けるように組み敷きながら、俺は手のひらの上にぴたぴたとオイルを振り撒いた。
花のような香りかベッドの上に広がるが、すぐにアルコールの匂いと混ざり残念な事になっていた。頭がクラクラとするのは、酔いのせいか興奮のせいか。
「んっ…」
オイルで濡れた指で再び窄まりに指を引っ掛けると、依月がゆるりと首を振った。
おそらく出るだろう否定の言葉を口にさせない為に、俺は幾度目かの口付けを落とす。
確実に酔いのせいだろうが、キスする事にはあまり抵抗は見られない。
「ふっ…ぅ」
微かに漏れる声に合わせ、濡れた指の先をゆっくりと秘腔に差し入れていく。
アルコールのせいか、熱い躰とその内。俺も体温は低くない方だが、彼のナカはくらりとする程に熱いような気がした。
「っあ……」
「…依月」
名前を囁いて、また唇を塞ぐ。同時にナカを掻き混ぜてみると、ぴくんとシーツの押し付けた背が震えた。
押し広げるようにナカをかき混ぜながら、依月の反応を見下ろす。
うろ覚えの知識で、男のナカにあるという凝りを手探りで探すと、不意に指先を掠めた箇所で依月の躰が大きく跳ねた。
「あっ…!」
唇の隙間から漏れる声。
なるほど、此処か。男でも感じるか感じないかは人によって違うそうだが、この反応なら依月は悪くはなさそうだ。
俺にとっては、喜ばしい事かもしれない。
(痛がる依月を犯すよりは、ヨガってる方がいい)
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