short
8 ※
ゆっくりと開かれた、とろんとして焦点の合わない瞳。受け止めた依月の精で濡れた手で、そっと彼の頬をなぞる。
赤く染まった頬に、白い雫。その光景はなんとも煽情的で、俺はごくりと喉を鳴らした。
「……ん」
汚された頬に気付いたのか、依月がぼんやりと此方を見やる。
そのまま頬を擦ろうとするのを、俺は汚れていない方の手で止めた。
「手が汚れるぞ」
「んー……」
彼の頬は俺が汚したのだが、付着しているのは依月自身の放った精だ。此処を俺のもので汚せたら……、なんて邪な欲望がせり上がるが、とりあえず俺は拭く物を取ろうと枕元のティッシュへ手を伸ばした。
手のひらを拭い、依月の頬を拭うと、先程より幾分かハッキリとした、けれどその奥にまだ炎を内包した瞳と目が合う。
「……惣」
「…ん?」
「……」
俺が彼の瞳を見つめ返すと依月はゆるりと一つ瞬きをして、何も纏っていない下肢を俺の足に絡めた。
「……当たってるよ」
小さな囁きが指すのは、彼の膝が当たっている、俺の下半身……つまりは先程から興奮しっ放しの分身な訳で。
ぽつりと、まだ熱の余韻を残した声で指摘され、またその場所が反応を示した事は分かった。
「僕も……さっき、惣にしてもらったみたいに、する?」
「……は」
一度欲を吐き出した依月は、それでもまだ酔っているようで、ぼんやりととんでもない事を言い出す。
俺がぽかんとするのも束の間、その間に依月は俺がしたように布越しに勃ち上がった欲に手で触れてくる。
「! っ、依月……!!」
「……お返し」
ふ、と蕩けたチョコレート色の瞳が悪戯っぽく微笑む。
その表情は何とも愛らしく、小悪魔的で……堪らなく俺の欲を煽った。
俺の下腹に触れる依月の手を取り、きょとんとする表情を覗き込んで言う。
「……それよりもっと、したい事がある」
「……」
瞬く依月は、ただ黙ったまま俺を見返す。
再び依月をベッドに押し倒す体勢になり、俺はシーツに沈む依月の無防備な腰から尻へ指を滑らせた。
「…あ…?」
窄まりに、指先を引っ掛けるようにして依月を見下ろす。
まだぴったりと閉じた依月の秘部。本来外から異物を挿し入れるような場所ではないのだから、当然だ。
けれど、彼の此処に自らの欲を挿し入れたいと、彼を犯したいと不埒な願望を抱いた回数は、既に数知れない。
友達の枠を、越えないように。そう律してきた感情は、既に戻れない所まできているのだ。
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