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* * *



「最近はヘンリーに頼り過ぎてる気がするから、交遊関係を広げると言うか、あんまりヘンリーばっかりに頼り過ぎないようにしたいんだけど……」
「…止めた方が、いいよ」


図書館での一件から数日後の放課後。

ヘンリーに手伝って貰った呪文理論のレポートで無事に“優”評価を貰ったセインは、廊下をふらふらとしていたアリアを捕まえて校内のカフェテリアへ入った。

自分一人だったら、レポートも合格ギリギリの“可”評価を貰うのが限界だっただろう。成績が上がるのは嬉しいのだが、少しズルをしているような気分になる。

その事を踏まえてアリアにそう相談したのだが、彼女は心なしか呆れた瞳で小さく首を振った。


「…気にしてないって、この前本人も言ってた」
「気にしてるのは僕だよ!」


ケーキセットにぱくつきながら此方を見るアリアに、セインは少し強い口調で言い返す。

この時間のカフェテリアはそれなりに人が多く、不意に大声をだしたセインは周りの客たちから注目をくらった。アリアは平然とイチゴを囓っているが、基本的に人見知りかつ小心者のセインはハッとして口元を覆った。

興味を失った周囲の視線が外れると、セインよりも先にアリアが口を開く。


「……あんまり、ヘンなことしない方がいい」
「え?」


彼女の言うヘンな事、が分からずにセインはぱちりと瞳を見張る。

外野のアリアから見れば明らか過ぎる程のヘンリーの執着だが、それを一身に受けているセインは気付いていないようだ。アリアは呆れ気味にため息を吐き、ロイヤルミルクティーをストローで吸う。


「…リーは、セイが他の人を頼るの、許さないよ」
「え…?」


アリアの告げる端的な事実に、セインが首を傾げる。

さっきからフォークが進んでいないセインの皿から、モンブランの栗の甘露煮を奪いつつ、アリアは淡々と訊く。


「…セイは、リーを頼りたくないの? 離れたいの?」
「え、離れたい……って訳じゃないけど、迷惑はかけたくないっていうか」


自分の皿からケーキが奪われていくのにも気付かず、セインはもごもごと言葉を濁す。

気まずそうなセインの様子は気にせず、アリアはぐいぐいと言及とフォークを進める。


「…どうして、迷惑かけたくない?」
「……呆れられたり、嫌われたりするのが、ヤだ」


ぽつりと答えたセインの頬は赤く、アリアはなんだ、両想いかと心の中で呟いた。流石にそれを構わず口に出す程無神経ではないが、セインはどうやら無自覚らしいのが気にかかる。

此処で妙に後ろ向きになったセインがヘンリーから距離を置こうとすれば、あの見目麗しい偏執狂の青年は黙っていないだろう。友人の身が危ない。


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あきゅろす。
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