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7 ※
どこが。言い返す言葉は口の中に含まれた指先に邪魔をされ、くぐもった嬌声になって消えていく。
ヘンリーの指を傷付けないようにと必死に声を抑えながら、後腔を解す指の動きに耐える。既に後ろだけへの刺激でも、すっかり快楽を感じるように変化してしまっていた。
「んっ…むぅ……」
後腔が銜え込んだ指は、既に三本目。後ろを向いている為に表情は見えないが、興奮しているのが分かる荒れた息遣いがセインの耳元にかかっていた。
ゆるゆると首を振って口腔内に銜えていた彼の指を外し、セインは背後のヘンリーを振り返る。
「もっ…そろそろ、挿れて……いいよ」
「……大丈夫?」
深い水底のようなウルトラマリンのその奥に、雄臭い欲情を宿して。
自分を見下ろすその瞳に、セインはこくんと唾液を飲み下した。
「…ん、大丈夫。……だからもう、きて」
ゆるりと躰を揺らす。自ら熱を強請る仕草に内心で爆発しそうな羞恥を抱えながら、セインはおずおずとヘンリーの表情を見上げた。
中性的な美しさを湛えた容貌が、欲情に歪む。……そんな顔が、セインは嫌いではなかった。
「ぁっ…」
後腔から引き抜かれた指に息を漏らすのも束の間、出入り口に添えられた熱に躰を震わせる。
「…力を、抜いてね」
さらりと、どろどろの指先がセインのココア色の髪を撫でる。
言う通りに息を吐こうとした瞬間、圧迫感に息が詰まる。
「っあ……!」
声を漏らさないようにと、咄嗟の理性が口元へ自分の手を持っていく。その上から重なったヘンリーの手のひらに、何だかおかしな気持ちになって瞼を開けた。
開いたカーマインの瞳で、ちらりとヘンリーの様子を見上げる。
詰めていた息を吐き出すその姿から強い艶と色香を感じ、セインはドクンと隠した鼓動を跳ねさせた。
「んっ……む…ぁ」
「……セイン」
二重の手のひらの中に消えていくセインの声と、切羽詰まった囁き声。
徐々に奥へと押し入ってくるヘンリーの熱を感じながら、セインは耐えるように自分の躰を寄りかかった書架に押し付けた。
「っ……!」
セインの荒い呼吸に合わせ、途中から一気に奥へ埋められた熱に吐息が漏れる。
息苦しくて首を震ると、口元を押さえていた手のひらが離れた。
「ふっ…ぅ」
「…平気?」
囁く声に、肩越しに振り返る。
気遣うように優しく額を撫でる手とは裏腹な、熱い瞳。そんな彼の表情を見上げ、セインは小さく微笑んだ。
「平気じゃないけど……いいよ。ヘンリーだから」
虚を突かれたように見張られる深い蒼。それが、何だかおかしかった。
けれど、そんな風に思っていられるのもほんの一瞬で。
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