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5 ※
戯れのような軽い口付けの後、書架に押し付けられていた躰を半回転させられ、相手に背を向けるような体勢にさせられる。
「あ…」
「後ろからでもいい? そっちの方が体勢的に安定するだろうから」
「ん…。いい、けど」
ヘンリーの言いたい事は分かる。が、顔が見えないのは少しだけ寂しい。
勿論そんな事は口には出せず、セインはただ小さく頷いた。
「ん、イイコだね」
そんな甘い囁きと共に、項に落ちる軽い口付け。
セインが詰めていた息を吐き出すと、僅かに開いた口腔内に形良い指が差し入れられた。
「むぐっ…?」
「今は何も持ってないから…。舐めて濡らして、ね?」
「ん…」
耳元に囁かれる声。恥ずかしいと思う気持ちがない訳ではなかったが、自身ももどかしい欲に支配されていた為、セインは素直にヘンリーの指を銜えた。
先程セインの迸りを受け止めたからか、僅かな苦味の残る指先に、爪の形に添って舌を這わせる。
嫌悪感は、あまり無かった。ただ今は、早くヘンリーから与えられる快楽が欲しかった。
「ん…ちゅ、ふ……」
「かわい……」
「んぅ…っ」
必死にヘンリーの指を舐め上げるセインに、ヘンリーがくすくすと笑いを漏らす。
自由な方の手で、セインの柔らかなココア色の髪を撫でた。
「んっ…」
「うん、そろそろいい…かな?」
「…ぷはっ…」
「はい、よく出来たね。イイコ」
不意に引き抜かれた指はテラテラと濡れていて、更にはセインの口元から銀の糸が引かれていて、酷くいやらしい気がした。
思わずセインが視線を逸らしたと同時に、後腔に添えられる濡れた感触。
「ちゃんと力、抜いてるんだよ?」
「あっ……はぅ、ん…」
暫し窄まりに濡れた指を擦り付けるようにして馴染ませると、ゆっくりと一本、指が差し入れられる。
幾度かヘンリーと躰を重ねているとはいえ、試験期間中で暫くご無沙汰。また、充分な潤滑油で濡らしていた訳でもなかった為、入れられた瞬間には引きつれるような痛みと違和感が生じた。
それをヘンリーに気取られるのが嫌で、唇を噛み締めて声を抑える。
背中を向けているから顔など見えていない筈なのに、ヘンリーは気遣うようにセインの髪を撫で優しく囁いた。
「セイン、大丈夫? やっぱり痛い?」
「ん…、だいじょぶ、平気……」
痛くない、とは流石に言わない。だって其処は、本来受け入れる為の場所ではないのだから。
けれど、その場所でヘンリーを受け入れる事を厭わないくらいには、セインも彼を好いている。
12/7/22
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