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short
フレイアの微笑

「格好いい」という形容よりは、まず最初に「綺麗」やら「美人」だという感想が出て来るような面立ちであると思う。

深い海の底のようなウルトラマリンの瞳。その瞳を縁取る長い、白銀の光を散らしたような睫毛。スッと筋の通った高めの鼻梁に、陶磁器のように滑らかな肌。その白にアクセントを加えるような鮮やかな緋の唇はやや薄めで、そこから囁かれる声色はいつも蕩けるように甘やかだ。
背中までを覆う男にしては長い白銀の髪は傷み一つなく、中性的な彼の容姿に良く似合っている。


「……世の中っておかしい」
「え?」


思わず呟いたセインの言葉に、何処までも精巧な造り物めいた男はきょとんと瞳を見張る。

誰もが陶酔する程の容姿を持ったこの男が、何故セインのような凡庸な少年を構い、膝の上に乗せ、アカデミーの敷地の端に掘った穴の中に泥に汚れるのにも構わずに座っているのだろうか。


「世の中は絶対におかしい」
「どうしたの、突然」


狭い穴の中で、整い過ぎた人形のようなヘンリーの容貌をちらちらと見つめていたセインは、神妙な態度でそう呟いて首を振った。

それきり俯いたセインの頬にヘンリーが手を触れると、それを払うかのようにふるふると頭を振る。

これだけ完璧な容姿と、高貴な家柄、魔法の才を持つ人間が、わざわざ自分のような凡庸な人間に構うのか。趣味が悪いにも程がある。


(……あぁ、ヘンリーの残念なところを挙げるとしたら、趣味が悪い事だな……)


はぁ、とため息を吐くセインを膝に乗せたヘンリーは、要領を得ない呟きを繰り返して黙り込む彼を不思議そうにじっと見下ろしている。

セインの柔らかい頬に指先を伸ばし、時折払われてもまた懲りずに触れる。

こそばゆい感触に、セインはそっと顔を上げた。


「……やっとこっち向いた」
「…………」


そう言って微笑む笑顔があまりにも眩しくて、セインは朱い瞳をきゅうと細めた。

薄暗い穴の中なのに、まるでその存在が光を放っているような錯覚を受ける。


「……、かき消されそう」
「…?」


ぽつりと呟いた声に、ヘンリーは軽く瞬いてセインを見下ろした。

頬に触れた指が滑って、首筋、シャツの襟に隠れた鎖骨をゆるゆるとなぞる。

生白い肌の上をするすると滑る指が、とん、とん、と何かを確かめるようにある箇所を叩いていく。


「……あ」


暫し相手のその仕草を見下ろしていたセインだが、彼が叩くその場所の法則性に気が付いて思わず声を漏らした。

生白い自分の肌の上、紅く咲いた花片を、確かめるように。


「…ヘンリー…っ?」
「ん?」
「ねぇ、さっきから何処を触って……」
「ふふ、セイン可愛い」


セインの言葉には応えず、上機嫌に笑いながら上気した頬に口付けを落とす。

柔らかい感触を頬の上に受けながら、セインははぁと息を吐いた。


(……やっぱり、趣味が悪い)


「愛してるよ、セイン」
「……うん」


そんな貴方が、好き。















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普段よりデレ度の高いセインと通常運転ヘンリー。

セインはヘンリーが趣味が悪いと思ってるけど、同時にしみじみと趣味が悪くて良かったと思ってる。デレですww


12/11/12〜12/4(拍手掲載)

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あきゅろす。
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