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親友と親友
* * *
俺には、二人の親友がいる。
一人は、同じマンションに暮らしている幼稚園来の竹馬の友。俺ら幼なじみで親友だよなー、などと言うと素っ気なく「ただの腐れ縁だろ」と返すツンな男ではあるが、何だかんだ二十年近く連んできた親友その一である。
何も言わずとも互いの事は大概よく分かっているし、向いている方向性は違くとも案外物の考え方は似ている。例えばどちらも家から近いから、という単純な理由で高校大学を選んだりな。
そしてもう一人の親友は、親友その一である惣に比べると、大学に入学してからの一年と数ヶ月と随分と付き合いは短い。…が、控えめだけれど一緒にいて和むような心地好いような彼の持つ雰囲気は、既に俺たちにとってなくてはならないものになっている。
何より、俺と比べるとフレンドリーのフの字も無い惣が僅か一年と少しで彼に完全に気を許しきっている事を考えると、親友その二こと依月の功績は大きいと思う。
……まぁとにかく、俺は親友その一その二こと、惣と依月のことが大好きである。もちろん、友人的な意味合いで。
だからこそ、一ヶ月程前に惣から唐突にカミングアウトされた事柄についても、素直に応援したいと思っているのだ。
…今から一ヶ月程前、俺たちが大学二回生に無事に進級出来て、その二回生という環境にも慣れてきた頃。
同じマンションに住んでいる惣の部屋に、俺がサークルの友人から借りた秘蔵DVDを持ってお邪魔した時の話だ。
この時、依月は居なかった。彼が大学に入学して三ヶ月程たった頃に始めた、喫茶店でのバイトが入っていたからだ。…でも、多分依月に何の予定がなかったとしても俺は彼を呼ばなかっただろうが。
童顔気味で妙におっとりした性格のせいか、依月は同い年ながら時折歳下を相手にしているような気分になる事がある。穢れがない、というか妙にピュアというか。
そんな彼を、オトナなDVDの鑑賞会に招待するのは何となく気が引けるのだ。…いや、これは仲間外れなんかじゃなくて、寧ろ親友を思ってるからだというかさぁ!
とにかく、その日は俺と惣の二人だった。
DVDを持ち込んだ俺をゴミを見るような目線で見下ろしながら(最早慣れてるから気にならないよ!)、惣が深々とため息を吐く。
「…自分の部屋で見ろよ、テメェ」
「俺ん家じゃ親フラの可能性あるじゃん? 兄フラならまだしも、姉フラでも割とツラい」
俺の家は両親兄姉と同居である。実家暮らしを不満に思う事などほぼ無いが、こういう、家族の目に触れると若干気まずいようなモノを見たい時は不便であると言わざるを得ない。
対して、惣の家は大学入学と同時に決まった両親の海外出張による一人暮らし。徒歩一分弱の同じマンションの敷地内にそんな素敵な環境の親友宅があるのだから、お邪魔しない手はない。
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