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short
3

「な、…な、ヘンリー……?」
「…ん」
「ぁ……」


たった今施された行為に、脳の処理が追い付かない。

カーネリアンの瞳を大きく見開いて、ぽかんとヘンリーを見上げる。

そのうちにもヘンリーは頬に、目元に、額に、次々に触れるだけの軽い口付けを落としていく。

バードキスの雨の最後にもう一度、唇の上に彼の緋い唇が触れる。


「あ……ぁ……」
「…かわいい」


発する言葉が見つからなくてわなわなとヘンリーを見上げていると、それは柔らかく微笑んで彼はそう囁いた。

砂糖で煮染めたような甘い声の囁きに、ぷつりと思考がショートする。


「――っ、あ、わぁぁぁぁぁっ…!!」
「わっ」


セインが掘った、二人分の躰ギリギリを収める大きさの穴の中、土がセインの意思を汲むようにうねった。

水属性のヘンリーはこれには流石に驚いたらしく、セインを包み込んでいた躰が小さく揺れる。


「セイン、危ないよ!」
「っ、やっ、はなっ…離して……!」
「セイン!」


離して、そう懇願してもヘンリーは聞かない。

うねる土の中、体勢が変わって今度はヘンリーに正面から抱き込まれる姿勢になりながら、セインは魔法とは裏腹に弱々しい抵抗を続ける。

躰をすっぽり覆うように触れる相手の体温に、自分自身の熱が上がっていくのを感じた。

心臓が爆発しそうに煩い。躰が、顔が熱い。ヘンリーに触れられた唇は、もっと熱い。


「大丈夫、大丈夫だから、セイン。危ないから、落ち着いて……」
「っ……」


一体、誰のせいで狼狽していると思っているのか。

そう思うのに、彼が宥めるように背中を撫でると、優しい声で囁くと、ゆっくりと呼吸が整っていくのを感じる。心臓はまだ煩いままだが、動揺で我を失っていた意識は幾分落ち着いていった。

肌に感じる、ヘンリーの体温。その感触だけに、埋められていく。

暴走が止まった土に小さく息を吐くと、ヘンリーはセインを抱き締めてその髪を撫でた。


「セイン」
「……」


先程よりは落ち着いた、けれども甘く溶けるような声色。

それを不快だとは思わなかったが、胸がざわざわとざわつく。その感覚は恐怖にも似ていた気がしたが、それとはまた違う気もする。

……この感情は、なんだろうか。

さらさらと、長い指が髪を梳く。時折項を掠める感触に、肌がぞくりとした。


「…このまま、ずっと」
「…?」
「離したく、ないなぁ……」


ぽつりと落とされた呟き。ぎゅっ、と肩に回された腕の力が強まり、セインは顔を上げる。


「……」


けれど此方を見つめる深蒼の瞳が、知らない光を灯していて、訳の分からない感情に再び顔を伏せた。

セインには彼の感情が分からない。自分の感情が、分からない。

まだ、分からないままでいいと、そう思った。

















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段々ヤンデレの片鱗を見せ始めるヘンリーさん(笑)

一応、まだくっ付きはしませんw ……と、いうのも、このセインとヘンリーの四話目は、時間軸的には未だエリオアリアの二話目やセイン初登場の間章を追い越していないからです。

エリオットとセインが初めて接触する話では、既にアリアはヘンリーと一応顔見知り以上の面識があって、セインとヘンリーは恋人ギリ一歩手前です(笑) なので、時間軸的にそこを越えてないとくっつけないのです(^^;)

エリオアリアがかなり間の時間をすっ飛ばして進行してるので、小刻みに進んでいるヘンリーセインはなかなか追い付きません。困ったものだww


12/10/27

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