short 2 「…ベッド使っちゃってごめんね。ありがとう」 「いや、気にすんな。お前がすぐ潰れるって分かってて、圭也止めなかった俺も俺だしな」 あぁ、やっぱり昨日僕は圭也に潰されたらしい。 一気に半分程水を飲み干し、ペットボトルを惣へ返す。 「圭也は帰ったの?」 「あぁ、明け方にな」 「というか今……何時?」 大分はっきりしてきた頭をふるりと振って、ベッドの脇に座った惣に訊ねる。 今日は確か二限から講義だったような気がするけど…、もう間に合わない時間だったらヤバい、ような……。 段々顔が強張っていく僕にくつくつと笑い、惣は部屋の時計を指差した。 「まだ七時半だ。一限にも間に合うぞ」 「良かった……」 「今日、一限か?」 「ううん、二限からだけど」 まだ時間に余裕があるとはいえ、そろそろ準備しないと。いつまでも惣の家にお世話になる訳にもいかない。 ……いや、いつも充分過ぎるくらいにお世話になってる、けど。 伸びをしながらベッドから立ち上がると、部屋の隅にまとめられた荷物を手に取る。荷物まで運んでくれたのか、惣も大概まめだ。 「まだ時間あるだろ。シャワー浴びてくか?」 言いながら、惣は僕の頭の上を指差す。……うわ、寝癖。 みょんみょんと跳ねた毛先を指で触りながら、僕はゆるりと首を振った。 「ん、ありがとう。…でも、一回家に戻るから大丈夫だよ」 筆記具とかノートとかは持ってなかったから、一度家に戻って準備しないと。…つくづく、惣が早めに起こしてくれて助かった。 とりあえず寝癖だけでも直そうと、洗面所を借りる。少し水を付けたくらいでは全く直らず、半ば水を浴びるようにしてムリヤリに髪の跳ねを矯正した。 「シャワー浴びてくのと、あんま変わんねえじゃん」 結局髪全体をしっとりと濡らす事になった僕に、惣が笑いながらタオルを投げて寄越した。 「惣は、今日講義休み?」 「三限。ドイツ語」 「あ、そういえば僕と一緒か」 理系の惣と文系の僕とでは学科も違うし、基本的に講義はほとんど被らないんだけど、一週間のうち一度だけ第二外国語の講義だけは一緒。 純粋な学校生活では意外と一緒にいられない惣と机を並べられるのが嬉しくて、僕はにこりと微笑んだ。 「じゃあ、お昼は一緒に食べようね」 「…あぁ」 簡単に身支度を整え、ひらりと手を振って通い慣れた友人宅を後にする。 大学とは反対に位置する家までの道を急ぎながら、惣と圭也がうちの大学に入ったのは、家の近さからなんだろうなぁ、なんて考えた。 徒歩10分とか、羨まし過ぎでしょ。 ≪ ≫ [戻る] |