short
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ペットボトルのキャップを閉める満朔の仕草を頬杖をかいて眺めながら、稜平はしみじみとした様子で口を開いた。
「……考えてみると、ミッサとの付き合いって、まだ一年とちょっとなんだよな」
「何だよ、今更」
「いや、もっとずっと一緒に居る気がするけど、って」
確かにそんな風に改めて数字を反芻してみると、体感より短く感じない事もない。
それは学校生活の大半を、相手とほぼずっと一緒に過ごしているから、だろうか。
「まぁ確かに、短いような気はするかもな」
「だよなー、もっと一緒に居るよなー」
けれど、そんな事を改めて口に出すのは、少々気恥ずかしい。
僅かに視線を逸らす満朔に対していつも通りな態度の稜平が癪に障り、満朔は手にしたペットボトルの底をぐりぐりと稜平の頭頂部に押し付けた。
「…え、ミッサ、何?」
「……禿げろ」
「!? えっ、何いきなり!?」
思い付きの呪詛を口にすると、流石にそれは嫌だったのか稜平はガバリと身を起こしてペットボトルを振り払った。
「オヤジがハゲじゃないから、多分大丈夫……」
「母方のおじいさんも確認した方がいいぞ。ハゲは母方からも遺伝するらしいから」
「えっ、え!? じいちゃん大丈夫だったっけ……」
あたふたと慌て出す稜平を見て小さく笑った満朔は、残ったロイヤルミルクティーを飲み干した。
「み、ミッサこそ大丈夫なのかよ」
「ウチの家系は代々大丈夫です」
「くそ……。いや、俺だって多分大丈夫の筈……」
「…ふはっ」
じいちゃんがカツラじゃなければ…、と真剣な様子で呟く稜平に、堪らなくなって吹き出す。
一頻り肩を震わせて笑った後、教室の時計を見上げて立ち上がる。
「…ん、そろそろ行こうぜ」
「え、あぁ…」
稜平の補習の後にくすぐったい雑談をしていたお陰で、思ったよりも時間をくってしまった。
机に突っ伏す稜平の茶色の頭に軽く手のひらを当て、クスと笑う。
「多分禿げねえから、安心しろ」
「う、うん…」
珍しく本気で怯える稜平に満朔がまた声をあげて笑うと、稜平も鞄を持ち上げて立ち上がった。
空になった満朔のペットボトルと飲み干した自分の分とを、まとめてゴミ箱に放り投げ、先を歩いていた満朔の隣に並ぶ。
「…この後どうする? ちょっと遅くなっちゃったけど、どっか寄るか?」
「んー、マックか、ゲーセンか……」
「俺はどっちでもいいけど?」
最寄り駅までの道のりを歩きながら、二人は笑う。
今日はなんとなく、真っ直ぐ帰るという気にはならなかった。
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稜平満朔のファーストコンタクト話。稜平はコミュ充です(笑) 満朔は若干の人見知りですが、コミュ症とまではいきません。普通レベルの人見知りですw
男子高校生二人が放課後の教室でこんな話してたら、友情としては最早ギリギリラインだなー(爆) 忘れ物取りに来たとしても、教室入れないですねきっとww お前ら実はもう付き合ってるだろ、とww
12/10/5
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