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レモングミ
顔立ちは文句無しに男前。身長も180cmに少しのるくらいと結構高く、高二という年齢を考えれば更に伸びる見込みもあるだろうか。
人当たりが良く気さくな性格で、男女を問わずに友人が多い。やや空気の読めない所はあるが、邪気は無い為どうにも憎めない。
成績の方はお世辞にも良い方だとは言えないが運動神経は非常に良く、二年になった今でも運動部からのスカウトが無くならない。本人に部活動をする気はないらしいが、時折友人にどうしてもと頼まれれば助っ人として試合に出ては、必ず成果を出して帰って来る。
つまり、何が言いたいかというと。
稜平はモテる。このスペックでモテない方がおかしい、といったところか。
満朔はお気に入りのミルクティーを飲みながら、ケータイを見て軽く眉を寄せている稜平を見つめた。
「どうした?」
「あー、うん」
歯切れの悪い返事の仕方から見て、また呼び出し系のメールなのだろう。
友人の多い稜平のアドレスは、時折直接の関わりの無い人間にも伝わっているらしく、しかもそういった相手に限って前置きの無い呼び出しのメールがしばしば来るのだ。
ゆるりと首を振った稜平はケータイを閉じ、満朔が机に置いたミルクティーを取り上げた。
稜平は相変わらず一言の断りも無くそれに一口口付け、代わりに満朔は彼から差し出されたサイダーを一口口に含んだ。
パチリと舌の上で強めに弾ける炭酸。相変わらず、満朔には何が良いのか理解が出来ない味だ。
カリカリと首の後ろを掻きながら、稜平が珍しく言葉を選ぶように口を開く。
「…あのさ、ミッサ」
「何だよ」
「今日帰り…、そうだな、10分くらい待ってて貰えるか?」
10分。そんな短い時間で、告白の返事を終わらせるつもりなのか。
満朔は手元に戻ってきたペットボトルのキャップを緩め、甘いミルクティーで炭酸の余韻を誤魔化す。
「…別に、いいけど」
「ん。じゃあ待ってて」
誰かに呼び出される時、稜平は決まってこうして満朔に「待ってて」と言う。
別に満朔が稜平を待つ事だなんていつもの事なのに、それこそ補習や部活の助っ人に行った時なんて数時間待たされる事なんてザラなのに、何故か稜平はこういう時だけ少し気まずそうにする。
(…なんで)
こういう時だけ稜平は、用事を言わない。誰に呼び出されたから、だなんて絶対に。
呼び出し、というある方面からみればデリケートな問題だから、という訳ではないと思う。稜平はそんな事を気にするタイプの人間ではないし、何より満朔が側に居ない時に他の友人に誰に呼び出されたのかを訊かれ、答えている場面を偶然見た事もある。
…彼が呼び出しという用事を告げないのは、満朔にだけなのだ。
(…なんで)
稜平はどうして、自分にだけはそれを言わないのか。そして自分は、そんな稜平の態度にモヤモヤするのか。
(稜平がモテるのなんて、それこそ最初の方から知ってんのに)
ケータイをポケットにしまった稜平は、もういつも通りの様子で椅子の背もたれに身を預けている。
満朔だけが、胸のモヤモヤをしまいきれない。
「…稜平、」
「ん?」
何で、俺には言わないの? 彼女作るつもり、ないの?
言いたい事はいくつもあるけど、そのどれもが言葉にならなくて。
結局、満朔は他愛の無い言葉だけを口にする。
「…今日帰り、コンビニ寄ってこう」
「ん? あぁ」
今、どうしようも無く、レモンのグミが食べたかった。
(この胸の酸っぱさに似た味を、思いきり噛み締めたい)
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モヤモヤするミッサ。言いたい事を口にすると何かが狂いそうで、絶対に言えない。
稜平は無意識なりに満朔をそういうのに近付けるのが嫌で、彼には言わないようにしてます。バレバレなのにね!(笑)
12/7/24
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