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short
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「ふぅん……握手求めたトコは初めて見たな。視線合わせてくれたのを気に入ったのか」
「ん」
「そうか、良かったな」


エリオットの側に戻ったアリアは、彼に頭を撫でられたふわふわと表情を綻ばせている。

そんなアリアをじっと見つめたフィーネは、ぽつりと一言。


「…かわいい…、お部屋に飾りたい……」


その呟きは例えば、ぬいぐるみや人形などを見た時に零れるそれに近いだろう。

アリアはぱちりとエメラルドの瞳を瞬かせ、腕を頭の後ろで組んだランスがからからと笑う。


「フィーネは昔からぬいぐるみとか可愛いもの好きだよなー」
「……え」
「…あー、フィーネ、悪いがこれは俺のだ」


ペットだ雛鳥だなどと称された事は多くあれど、ぬいぐるみ扱いはアカデミーに来て初めてだ。思わず声をあげたアリアと、呆れ気味に首を振ってアリアを引き寄せるエリオット。

アリアをじっと見つめていたフィーネは、ハッとしたように顔を上げ首を振る。


「べ、別にそんな変なつもりで言ったんじゃないわよ!? ただちょっと、可愛いなぁ…と」
「……、分かった、お前には今度街で部屋に飾る用のでっかいぬいぐるみでも買ってやるよ。ランスが」
「俺ぇ!?」


水を向けられたランスが、ギョッとしたように声をあげる。

途端、フィーネの白い頬がふんわりと朱に染まったのを、たまたま顔を上げたアリアは目にした。


「日頃世話になりまくってるだろうが、たまには何かしてやれよ」
「いや確かに、レポートの世話とか頻繁に見て貰ってるのは認めるけど……」
「あ、あれは私も別に嫌じゃないし…。いいわよそんな、別に」


ふるふると首を振ったフィーネと、そう?、などと首を傾げるランス。

その様子を見ていたアリアは、くい、とエリオットのローブを引いて囁いた。


「…フィーと、ランは…」
「幼なじみ。今のところ、それ以上ではないな」


でも、お前でも分かるくらい分かりやすいか、と肩をすくめる。

初対面のアリアでも、フィーネの表情を見ていればなんとなく察する事が出来る。フィーネの、幼なじみに対する感情を。


「…初対面の相手が察する事でも、ランスのバカは気付かねえけどな」
「……」


アリアにだけ聞こえる声で呆れたようにそう呟いたエリオットに、アリアは再び二人へと視線を向けた。


「……、仲は、良さそうなのに」
「まぁ、仲は良いよ。決定打は足りないけどな」


三年前からこの一向に進展しない二人に挟まれているエリオットは、ため息を吐きながら首を振った。


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あきゅろす。
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