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エリオットとアリア V

「……あっ」


アカデミーの古い石廊の先、見慣れた後ろ姿を見付けて、アリアはぱたぱたと駆け出した。


「……?」


しかし、彼に近付くにつれ、彼の近くに見知らぬ人影が居る事に気付き、思わず足を止める。


「……ん? アリア、どうした?」


アリアの軽い足音には気付いていたのか、廊下の途中で立ち止まってしまったアリアを、エリオットが不思議そうに振り返る。

エリオットの声に何だ何だと振り返るランスと…、アリアにとっては見知らぬ人影。

僅かに青みがかった長い艶やかな黒髪と、深いアイリス色の瞳。ぱちりと瞬いた彼女と目が合ったアリアは、ハッとしてエリオットの背中に飛び込んだ。


「うぉっ……。…あー、そいや会った事無かったか…」


小さく軽いとはいえ、弾丸のような勢いで背中に激突されたエリオットは、流石に少々よろめきながら呟く。

見た目と行動が小動物を思わせるアリアは、少々人見知りだ。彼女にとっては初めて会う筈のアイリスの少女に驚いてしまったらしい。

アリアの行動に覚えがあったのか、様子を見ていたランスもからからと笑う。


「相変わらず人見知りなんだなー」
「えっ、あ……、もしかして私が悪かったの……?」


エリオットの背中に隠れるアリアと、苦笑いのエリオット、明るく笑っているランスを見て状況を察したらしい少女、フィーネ=コリンズが困ったようにおろおろし始める。


「別に悪いって訳じゃないが…、ホントにただの人見知りだから。ほら、アリア、別に怖くないぞ」
「……ん」


背中にしがみついてアリアの頭を撫でてやると、大粒のエメラルドの瞳がフィーネをじっと窺うように見上げる。

小さな体格の割に強い眼差しに、フィーネは戸惑ったように瞳を瞬かせた。


「えーっと……」
「悪い、とりあえず自己紹介してやってくれ」


ほら、とエリオットがアリアの背中を軽く叩くと、アリアはそっと彼から離れてフィーネをじっと見上げた。

フィーネはゆるりと首を捻り…、アリアの視線に合わせるように身を屈ませる。


「フィーネ=コリンズ、ウンディーネの三年次生よ。…貴女のお名前は?」
「……、アリア。アリア=ハーディー」
「そう、貴女がいつもエリオが可愛がってる子ね」


フィーネがアリアに視線を合わせてくれたお陰で、アリアはいつものように相手を見上げる事なく目を合わせる事が出来る。

小さく微笑んだフィーネに、アリアもそっと表情を綻ばせた。


「……フィー」
「えっと、私のこと?」
「ん」


こくっと頷き、アリアはフィーネの手をきゅっと握った。


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あきゅろす。
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