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いちごメロンパン

もぐもぐと、男子高校生にしては随分お上品に、淡いピンク色の菓子パンを頬張る姿。

…見慣れたそれだと言えば、確かに見慣れた光景。けれど最近ふとした瞬間に、稜平は満朔の仕草が改めて目に付くようになって。


「…いちいち、チョイスが可愛いんだよなぁ」
「…?」


未だ口の中に食べ物が入っているからか、行儀の良い満朔は口を開く事はない。けれど稜平の呟きに対して、これでもかという程に胡乱げな眼差しを向けてくる。

冷めた眼差しを見ていると、「可愛い」というのは幻想だったように思えてくる。…否、そもそも男に対して「可愛い」という形容自体がおかしいのだが。


「……、何だよ」


ごくんと口に入ったいちごメロンパンを嚥下してから、満朔は胡乱な瞳をそのままにややトーンの低い声で訊いてくる。

流石に、今この場で「ミッサの食べるもののチョイスがいちいち可愛い」なんて言えば、親友が更に不機嫌になる事くらい稜平にも分かっている。

稜平はただ首を振り、自分の分のコロッケパンにかぶりついた。


「別に」
「…、あ、そう」


そう言って、またぱくりと、稜平のそれより小振りな一口を口にする満朔。

今日の彼の昼食は、パステルピンクのいちごメロンパン。飲み物はいつも通りの甘いミルクティーで、その量と相俟ってもまるで女の子のようだと思う。


「…ミッサ、それ一個で足りんの?」
「あぁ、うん。休み時間にお菓子食ってたし」


別に足りる、と答える満朔に、いつもながら信じられない思いだ。

そんなんだからいつまで経っても背が伸びないんだ。などと言ったが最後、満朔から拳が飛んでくるのは経験上よく知っているので口には出さないが。

ただでさえ食べる量は、稜平の半分以下。お菓子を食べていたとはいっても、稜平だってその一箱の半分以上を貰っていたのだから、満朔が食べていたのはそう大した量ではなかった筈だ。

もくもくといちごメロンパンを頬張る姿を見ながら、稜平はため息を吐いた。そんなんだから同い年の男とは思えない程その腕は、脚は、腰は細いのだ。


「もっとちゃんと食えよ…」
「……、だって、食えないんから仕方ないだろ」


一応、自分でも食が細いという自覚はあるのか。

稜平の呟きに、満朔はバツが悪そうにそっぽを向く。

……その仕草は結構、可愛い。


「…………」
「稜平?」
「……、何でもね」


最近、自分は少しおかしい。相方の可愛い所が、何故だが妙に目に付く。


(…ミッサが可愛いのなんて、今更だよなぁ…)


口が悪くて、でも案外面倒見が良くて。いつもぶつくさ文句を言いながらも稜平に付き合ってくれる相方が、可愛くない筈はない。


「ミッサ」
「ん?」
「今日帰り、ファミレス寄ってこ。この前補習見てくれたお礼に、何か奢るから」


ぱちり、ドングリみたいな丸い瞳が、此方を向いて瞬く。


「…パフェが食べたい」
「りょーかい」


だからいちいち、選ぶ物が可愛い。















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ラズベリーソーダ続き。少食な上、食べる物が女の子みたいな満朔さんw

親友の筈が可愛く見えるなんて変だ。…いや、ミッサは最初から可愛いか。と、妙な結論に達した稜平(笑) この二人のファーストコンタクトも書きたいなぁ。


12/5/28

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