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「…フクロウにシマリスに、お前は一体何匹この部屋に連れて来てるんだ?」
「えー、此処にいる子たちはミズチも入れて全部で十匹ですかね。これでも実家に泣く泣く置いて来た子とかも多いんですが……」
指折り数える春氷に、暁は小さくため息を吐く。
実家も含めれば、彼は一体何匹の動物を飼っているのか。
犬猫のような普通のペットではなく、どれも比較的珍しい動物ばかりなのが春氷らしいが。
そうこうしている間にお茶が入り、リビングに持って行こうとした刹那に三度目の悲鳴。
「わぁぁぁっ!」
「…今度は何だ」
今のは生徒会唯一の一年生、庶務の飯田晋介(はんだ しんすけ)の声だろうか。
気持ち歩調を速めた暁の後ろを、春氷はいつも通りのんびりとした様子で着いて行く。
「な、生カピバラさん!」
「…は?」
今度は何が起こったのかと心配して来てみれば、晋介は少し嬉しそうに部屋の一角を指差していた。
その指の先を辿って見れば、デフォルメされてキャラクターにもなっている世界最大のネズミ目。
「…これまた凄いのが居るな」
「ネム」
春氷が名前を呼ぶと、モクモクと草を頬張っていたカピバラが此方を振り向いた。
「あっ、あの!」
「ん?」
普段は冷めた様子で毒舌ばかり吐く可愛くない後輩は、少々興奮した様子で春氷に問い掛ける。
「さ、触っても大丈夫ですか…?」
「あぁうん、大丈夫だよ。ネムは大人しいから」
「あ、ありがとうございます!」
カピバラ好きなのか…、といつになく輝いた後輩を見つめながら、暁は紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。
智佐は未だにシマリスに夢中で、席に着いているのは等と雄二郎、そして一応部屋主の一人である由貴だけだ。
「あ、ありがとうカイチョー」
「いや。…お前らは触って来ないのか?」
「うーん…、俺はさっきフクロウと充分触れ合ったからさー…」
若干遠い目をして答える雄二郎。木の枝に止まって此方を窺っているように見える黒フクロウが、まだ少し怖いらしい。
等の方は元より臆病だから、自ら積極的に触りに行く勇気がないのだろう。カップを受け取りながら、のしのしと床を闊歩する大きなリクガメを眺めている。
「……ていうか此処、なんなの? 動物園?」
「…まぁ、似たようなもんだよ…」
紅茶に口を付けながら、ぼそりと呟いた雄二郎に、疲れたような様子で答えた由貴。…何せ彼は此処に住んでいるのだ。こんな表情もしたくなるだろう。
「サファリパークの中に住んでるんだと、俺は思ってる」
「…もしかしなくても、コイツらを部屋に呼ばなかった理由もこれだよな」
「あぁ、うん…」
暁が訊くと、苦笑いした由貴が頷く。
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