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short
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ぺたぺたとヘンリーに遠慮なく触れられているセインを眺めながら、アリアは口を開く。


「……セイ、友達いたんだね」
「……。なんかもう、色々反論したいのは山々だけど、友達居ないのは事実だから否定出来ないや…。でもとりあえず、別にこの人は友達って訳じゃないから」
「あれ、違うの?」


疲れた声音で否定を口にしたセインに、きょとんとしたような声で返すのはヘンリー。

顔を上げると、意外そうな、残念なような表情をする美貌。はたして、彼との数少ない接触の中に“トモダチ”になるような要素があっただろうか。セインはゆるりと首を振る。


「いや、別に友達とかじゃないでしょ…。直接会ったのはまだ二回目だし、僕はアナタのこと、せいぜい名前と所属くらいしか知らないし」


どう甘く見積もっても、せいぜい“顔見知り”程度の間柄にしかならない筈だ。何がそんなに不満なのかは知らないが。

未だにヘンリーの腕の中、眉を寄せているセインを見て、アリアが肩をすくめる。


「……顔見知り、なら、セイはそんな距離を許さないでしょ?」
「え? ……うわぁぁっ!? ちょっ、もういいでしょ、離して!」


改めてアリアに指摘され、やっと自分がどんな姿勢をしているのか、そして先程から周囲の視線を集めて続けているという事を思い出したらしい。

さっきは寧ろ自分から青年にしがみついていたではないか。などと指摘してやりたいのは山々だが、それをするとセインがいよいよ羞恥で爆発してしまうだろうからと、アリアはころりと頬の中で飴玉を転がし、様子を眺めるだけに留めた。

再びパニックに陥ったセインをしっかりと腕の中に閉じ込めるヘンリーは、真っ赤になるその頬をつついて拗ねたように唇を尖らせる。


「よくないよ。…友達じゃないなら、セインはもう私と会ってくれないの?」
「いや…っ、ていうかちょっとこの体勢……顔近い…!」
「私はもっとセインの事知りたいのに……。友達、って言ってくれないと離さない」


そう言ってギュッと小さな躰を抱き締めるその姿は、端から見ているととても“友達になる事を求めている”様子には見えなかった。

どう見ても、それ以上だ。アリアは溶けてなくなった飴玉の代わりに、今度はポケットからチョコレートを取り出し口に入れた。

アリアが半ば呆れ気味に、周囲の女子学生の一部が心なしか輝いた瞳でその様子を見守っている事など知らず、ヘンリーに迫られるセインは首元を押さえられ、彼から視線を逸らす事も出来ずにぱくぱくと口を開閉している。


12/4/22

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