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Sweets and Rose(12年ホワイトデー)

2月14日。恋人同士の愛の為に殉教したと言われる聖人の祭日では、いつの頃からか男性が女性に花を、女性が男性にお菓子を贈る事が慣習となっている。

珍しく用事で街へ外出したエリオットは、女性用の菓子の特設コーナーを見て微かに眉を寄せた。


「…そう言えば、そろそろそんな時期だったか」
「2月14日? …あぁ、エリオあんまり甘いもの好きじゃないもんな」


でもそんなにうんざりした声で言わなくったってよくね?、と外出に着いて来たランスは言うが、エリオットにとっては充分にそれは“うんざりする事”である。

学年一の魔法センスを持っていると言って良いエリオットは、整った容姿も合わさってそれなりにモテる。

但し直接渡しに来る相手のものは絶対に受け取らない事が知られている為、昨年の2月14日は机やらロッカーやらの中にお菓子があふれかえる結果になってしまった。

顔も分からない相手の贈り物など(しかも大半が苦手とする甘いものだ)当然処理仕切れず、そのほぼ全てをランスを押し付けたエリオットは、昨年の光景を思い出して首を振った。


「…今年はロッカーに厳重に鍵を掛けておくか」
「そしたらいよいよ机がパンクするな」


軽口のように応えたランスに、エリオットは深くため息を吐く。…その言葉を否定出来る要素が、どこにもないのが辛いところだ。


「…甘いものを好まない相手に無理矢理菓子を押し付けて、女共は何が楽しいんだよ…」


本当に、心底うんざりといった調子で呟いたエリオットに、ランスも流石に苦笑いした。

…恋の祭日であると言われる割には、確かに全く相手の事を考えていない所業である。必死過ぎて、周りが見えていないのであろうか。


「まぁでも普通に、迷惑になる事しかやらない女の子はパスだよなー」


いくら可愛くてもさ。と、珍しくシビアな正論を吐くランス。

女性たちが群がる特設コーナーを素通りし、次に目に映ったのは男性用に設けられた生花のコーナー。


「…エリオ、今年は花買うのか?」
「…どうしようか」


去年までの祭日とは違う事。それはエリオットに、可愛がっている少女が出来た事だが。


「彼奴はどう見ても、花より菓子の方が喜ぶ気がするからなぁ…」
「あー」


小さくとも食い意地の張った、エリオットの雛鳥。

くるくると煌めく彼女のエメラルドの瞳を思い出し、エリオットは肩をすくめた。


「……お前は? 何も買わないのか?」
「俺がー? だって、誰にあげんの?」


話題を変えようと振られた言葉に、ぱちりと瞳を瞬かせて訊き返したランスは、相変わらずの鈍感っぷりだった。

もう一度ため息を吐いたエリオットは、売り場に山と積まれた菓子と花とを見比べて肩をすくめた。


12/3/12〜4/12(拍手掲載)

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あきゅろす。
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