short
3
「……ていうか何この色? 赤? ピンク?」
どうせいつものコーラかサイダーだと思っていたら、どうにも色味が違う。
鮮やかなマゼンダ色に戸惑う満朔に、手持ち無沙汰にシャープペンを回す稜平が答える。
「何か新しいの出てたから。ラズベリー味だって」
「ラズベリー…? ふぅん」
胡散臭そうに相槌を打った満朔は、とりあえずキャップを開け、稜平よりも小さな“一口”を口の中に流し込んだ。
甘酸っぱい味が、炭酸と共に舌の上で容赦なく弾ける。
「うぇ、甘酸っぱ……」
「俺は結構イケると思ったけどなー」
顔をしかめて稜平にペットボトルを返すと、飄々と言った彼はそのまま返されたボトルに口を付けた。
ごくごく、と炭酸を飲み干していく喉元をぼんやりと眺める。パチパチと弾ける気泡が苦手で、炭酸を飲む事が出来ない満朔にとっては、何となく凄いと思ってしまう光景だ。
(……いや、何も凄くはねぇけど)
それにしても、体格が良いだけあって、男らしい首元である。上下する喉仏も、自分のより大きいだろうか。
ぼんやりと、無意識に自分の喉元を指でなぞった満朔は、ペットボトルを置いて此方を見やった稜平の声に我に返る。
「ミッサ? 問D教せーて?」
「ん、あぁ…」
訊かれて、プリントを引き寄せる。
ついさっき問Cを教えて、直ぐに次の問題で引っかかっているのか。いつもの事だ。まったくもって進歩が見えない。
ため息を吐きながら、稜平にも理解出来るレベルの説明の仕方に頭を絞る。
「…………」
補習をしろと命じられた稜平よりもよっぽど、難しい顔で唸っている満朔。
くるくると手持ち無沙汰に手の中でペンを回す稜平は、悩む満朔の顔をぐたりと机に突っ伏したままジッと見上げた。
(…今、ミッサは俺の為に悩んでくれてんだよなー)
申し訳ないと思わない事もないが、それ以上に妙な優越感というか、愉悦感がある。
口の悪いこの友人が、なんだかんだ言いながらも自分の面倒を見てくれる事だとか。そんな事が何となく心地好い。
眉間に皺を入れても小綺麗な満朔の顔をぼんやり見上げ、ふと気付いた事を口にする。
「……ミッサってさ」
「あ?」
「睫毛長いんだな。女の子みたい」
「……、喧嘩売ってんなら、買うぞ」
人が一体誰の為に此処まで悩んで、放課後の時間を潰してまで補習に付き合ってやっていると思っているのか。
ヒクヒクいうこめかみ。満朔はこれ以上バカにはならない、との判断の下で机に付した頭に容赦なく拳を振り下ろした。
「いだっ!」
「痛くしてんだよ! バカな事言ってねえで、気持ち切り替えて説明聞け!」
「…、おー」
殴られた頭をさすり、稜平は満朔の手元を覗き込んだ。
こうして怒っていても彼はなんだかんだ、最後まできちんと付き合ってくれるのを知っている。
「…聞いてんのか!? バカ稜平!」
「聞いてる聞いてる。…で、動詞の活用が何だっけ」
「聞いてねえじゃねえか!」
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炭酸水系青春びーえる!(笑) 友人同士な境界線ギリギリな青春BLが書きたくてw 仲良しな同級生も良いですよねv
満朔と稜平は、色々と凸凹コンビ。でも学校ではセットで扱われてますw
そう言えば徒名で呼んでるのも、このサイトではちょっと珍しいですね。単純に『ミツサ』って発音しにくそうだな、と思ったからなんですが(笑)
12/3/23
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