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short
3

「…どこかに、行きたい」
「……授業は?」
「……」


ふるふると首を振る。

授業はないのか、…サボってもいいと言っているのか。

エリオットも次の時間に講義があるが、成績は良い方なので別に一コマサボったところで特に支障はない。


「…ランス、代返は頼んだ」
「へっ?」


言って踵を返したエリオットにランスは瞳を見張っているが、構わずに歩き出した。隣をちょこちょことアリアが着いて来る。

各々の授業へと向かう生徒たちの流れに逆行して、二人は歩いた。

人の波を粗方抜けたところで、エリオットは一度歩調を落とす。コンパスの短いアリアが、僅かに息を弾ませている事に気付いたからだ。


「…悪い、大丈夫か?」
「…ん」


訊けば、アリアはこくんと頷く。

気の利かない自分にため息を吐き、エリオットは近くに何処か落ち着ける場所がないかと周囲を見渡した。

外に面した石廊の途中から、中庭へと出る。…屋外授業をしているクラスはないようで、広い庭園は静かだ。


「…此処でいいか」


陽射しを遮る大きな木の下、その根元に腰を下ろし、アリアを呼んだ。

小さな彼女を、自分の膝の上に座らせる。


「…リオ?」
「ん?」
「………」


不思議そうな顔をしたアリアに訊き返すと、彼女は口を閉ざした。

口数の少ない彼女にくすりと笑いを漏らすと、エリオットはその柔らかい金糸に指を通した。

手触りの良い羽毛のような柔らかい髪が、さらさらと揺れて指先を掠めていく。アリアが微かに瞳を細めた。


「……“ペット”は不満か?」
「……うん」


問いかけると、アリアにしてははっきりと是の返事を返した。

彼女がこくんと頷いた拍子に、指先で繰っていた柔らかな金糸が逃げていく。


「……じゃあ、何がいい?」


自分でも、少し意地の悪い問いかけだと思う。けれど、この質問はエリオットにとっても重要な事。

エリオットにとって、他の人間にどうとられているかなんていうのは、どうだって良いような事柄だ。…大事なのは自分の感情と、アリアの意志。

髪を弄っていた指を滑らせて、白磁のような頬を撫でる。大粒のエメラルドのような深緑の瞳が、真っ直ぐに此方を見上げていた。


「……、もっと、大事なモノがいい」


やがてぽつりと答えたアリアに、続きを促すように頬を指の甲でくすぐる。


「アリィは、リオが一番なのに……」


呟くような、微かな声。これだけの近距離でなければ聞き漏らしてしまいそうな程のそれだが、エリオットの耳にはしっかりと届いた。

溢れる愉悦に、口元の笑みを抑えきれない。


11/11/14

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あきゅろす。
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