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エリオットとアリア U
学内対抗の日にも思ったのだが、アリアは意外に人見知りだ。
今日も廊下を歩く触覚付きの小さな金色頭を見付け、エリオットはいつものように彼女に声をかけた。
「アリア」
「…リオっ」
くるりと振り向いた深緑の瞳が、パッと僅かに喜色を宿して輝く。
ぱたぱたと寄ってきた彼女を受け止めて頭を撫でてやっていると、エリオットの隣、先程から一人で何やら喚きたてていた(エリオットに話しかけていたのだが)茶髪の男が、小さなアリアを見て声をあげた。
「おっ、その子が噂の!」
「!」
突然エリオット以上の長身の青年に顔を覗き込まれたアリアは、ビクッと肩を揺らして逃げ惑う小動物のようにエリオットのローブに潜り込んだ。
彼女の全身をすっぽりと布の中に隠してしまってから、悪気は無くとも彼女を怯えさせた(一応)友人を睨み付ける。
「おいバカ、何俺のをビビらせてんだよ」
「えっ、え、何で? オレ別に何もしてないよ!?」
「バカが近くでバカ面晒すからだろうが、バカ」
「エリオ、バカバカ言い過ぎ!」
確かにバカだけどさ! と自ら認める『バカ』こと、ランス=ラインベルト。エリオットと同じくサラマンダークラスの三年次生である彼は、いくらエリオットがぞんざいに扱ったところで挫けない鋼の精神を持ったバカだ。
入学当初からエリオットに絡み続け、無碍にされても気にせずに絡み続け、遂には数少ないエリオットの友人ポジションを手に入れてしまったという、鈍さもここまでいくとあっぱれなバカである。…勿論これは、エリオット的には褒め言葉だ。
鈍感で大いに空気が読めていない部分があるが、まぁ悪い奴ではない。エリオットは躰をずらし、すっぽりとローブの中に隠れたアリアの頭を撫でてやった。
「バカだが、まぁコイツに特に害はないぞ。悪事を働く程の頭もないからな」
「おうっ」
「…こうやって嫌味も明るく肯定するバカだ」
呆れ気味にため息を吐いたエリオットの言葉に動かされたのか、アリアがそろそろとローブから顔だけを覗かせる。
警戒するようなと視線をじっと受けるランスは、そんな小動物に興味津々だ。
「エリオのローブに躰が全部隠れちゃうのか、ホントちっちゃいんだなぁ」
「あぁ。食い意地は張ってるんだけどな、さっぱり成長する気配を見せん」
「…………」
アリアにとって非常に失礼な会話がなされているが、彼女は彼らの言葉にはノーリアクションだ。
深い緑色の瞳で、じとっとランスを見上げている。
つんつん、とローブの裾をアリアが何か言いたげに引くので、エリオットは彼女を振り向いた。
11/10/29
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