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short
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「…とりあえず、飯食うか」
「ん」
「…ご一緒しても?」
「断る理由もねえだろ」


セインはまだ戸惑った様子だったが、エリオットは緩く首を振った。

アリアの“友達”を無条件に排除する程、心が狭くはない。


「…アリア、流石にそのままだと歩きにくい」
「あ」


腰にぺったり貼り付いたアリアの頭をぽんぽんと撫でてやり、とりあえず腕を解くように促す。

ぱちっと深緑の瞳を見張ったアリアは、エリオットの背中から躰を離すと、今度はローブの袖を掴んだ。

それも歩く邪魔にならない訳ではなかったが、ちょんと布を摘んだ仕草が可愛らしかったのでそのままにしておく。


「…で、何食うんだアリア」
「ん。…たまご…」
「……、オムレツセットでいいか?」
「ん」


訊きながらメニューにざっと目を通し、適当なものを選んでアリアに示す。

彼女がこくんの頷いたのを見て、今度は一歩遅れて後を着いて来るセインを振り返った。


「お前は?」
「えっ? …あっ、僕は自分で…」
「歳上の好意は素直に受け取っておくべきだぞ」
「……、日替わりセットを」
「あぁ」


自分の分のBランチと後輩の分を纏めて注文し、待ち札を受け取ったエリオットは適当な空席に足を運んだ。

注文したメニューは簡単な転移魔法で、座った席に届くシステムだ。

ごく当たり前にエリオットの隣に腰を下ろしたアリアと、彼女の向かいに少し躊躇いながら座ったセイン。


「……、先輩とアリアって」
「あん?」
「……いや、何でもないです」


ぽつりと何か言いかけたセインが、歯切れ悪く口を濁す。

向かいに座る友人はいつになく上機嫌のようだが、おそらくこの先輩は分かっていないのだろう。

彼と一緒にいるアリアは、おそらくいつもこの状態だ。

ため息を吐いたセインは、この状況について深く考えるのは止めにする事にした。あまり彼らに突っ込むと、昼食を食べる前から少し胸焼けをしてしまいそうだ。

そうこうしているうちにテーブルに料理が届き、三人は昼食を開始する。


「………」
「…ん? これか?」
「ん」
「ほい。……よく噛んで食べろよ」


……前言撤回。自ら突っ込まずとも、胸焼けしそうだ。

じっと彼の手元を見つめるアリアと、そんな視線に気付いて自分の皿から彼女におかずを取り分けてやるエリオット。

そんな感じのやり取りが数分置きに交わされるので、セインは思わず深くため息を吐いた。


「……仲、良いですね」
「ん? あぁ、…そうか?」
「…?」


呟いたセインに、顔を上げたエリオットが首を捻る。

彼に貰ったフライをもくもくと頬張っていたアリアは、ごっくんとそれを嚥下してからぽつりと言う。


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