short
エリオットとアリア、時々セイン
「リオっ」
ある日のお昼時。ぽすっ、と軽い音をたて背中にダイブしてきた感触に、エリオットは振り返った。
振り返った先には案の定、背中にくっ付く淡い金色の小さな頭。
「アリア」
名前を呼ぶと、顔を上げたアリアが小さく微笑む。…随分懐かれたか、最近はよく柔らかい表情を見せてくれる。
そのままよしよしとその頭を撫でてやると、アリアは心地好さそうにエメラルドの瞳を細めた。
「食堂で会うのは初めてだな。これから飯か?」
「ん」
無駄に広いこの学園には、食堂が敷地内に複数ある。
今まではたまたま別の場所に行っていたのか、単に時間がズレていたのか。とにかく、二人が食堂で一緒になるのは初めてだった。
「アリア、お前何食う…」
「…ちょっとアリア、いきなり走り出すの止めて……あ」
背中にくっ付くアリアの頭を撫でながらエリオットが訊きかけると同時、人混みを掻き分けて此方へやって来た少年が二人の様子を見て瞳を見張った。
「…セイ」
セイ、とアリアにそう呼ばれた茶色の髪の少年は、小柄な彼女と10cmも身長は変わらないだろう。態度から、おそらくは同級生。ローブの襟元には、土クラスの所属を表すバッチをしている。
エリオットとアリアを見て瞬きをする少年を、エリオットの方も品定めでもするようにじろじろと眺める。
「…お前に連れがいるのも、珍しいな」
「…さっき、選択授業だったから」
僅かに低めのトーンの声を出すエリオットと、相変わらずの様子のアリア。
エリオットに威嚇されている事を感じたのだろう、微かに頬を引きつらせながら少年は首を振る。
「……ノームクラス一年の、セイン=ウォレットです。アリアとはまぁ…、似た者同士の友人ですよ」
「エリオット=ロッドだ」
「知ってます。この前の個人対抗で、アリアと一緒に滅茶苦茶やってましたから」
「……」
滅茶苦茶、と言われたエリオットは眉間に僅かに皺を寄せたが、何も否定出来る要素はなかったので口を噤んだ。
代わりに未だエリオットの腰に貼り付いたままのアリアが口を開く。
「…セイはね、地面に穴を掘るの」
「は?」
「たまに誰か落ちるの。…落とし穴なの」
「別にあれは落とし穴のつもりで掘ってる訳じゃないよ。僕はただ、土が好きなだけ」
「………」
土属性を操るノームクラスには変わり者が多いと聞くが、どうやらこの少年、セインも例に漏れないらしい。そういえば、アリアとは“似た者同士”と称していたか。
…まぁ、変な少年ではあるが、エリオットの警戒するべき相手ではなさそうだ。
11/9/30
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