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餌付けの効果はあったのか、エリオットは随分この雛鳥に懐かれているようだ。…悪い気は、しない。
「…ま、お前が俺に“だけ”教えた事、わざわざ吹聴して回るなんて事はしねえよ」
「…ん」
此方を見つめたアリアが、花が咲くようにニコッと笑う。
滅多にない満面の笑顔が可愛らしく、エリオットは彼女に近付いてくしゃくしゃと頭を撫でた。
ついでに、包丁を置いた彼女の手元を覗き込む。
「スープ用か?」
「うん。…おいもは最後にいれるの」
そう言って、彼女は皮を剥いたじゃがいもを水の入ったボウルの中に移した。
傍らの鍋では、ダシの良い匂いがしてきたスープがぐつぐつと煮えてきている。
せっかく近くまできたので、アリアの邪魔にならない程度に近くで見学だ。
煮え立ったスープを弱火にし、鍋に蓋をしたアリアは、端によけてあった塊の肉をまな板の上に置いた。
「この部分のお肉が、一番美味しいの…」
「ほう?」
「ドラゴンはおっきいけど、このお肉はあんまり取れないんだよ…?」
「ふぅん」
所謂貴重な最高級の部位、であるらしい。
ちなみにこのドラゴンの特上フィレ肉が、高級食材として好事家に超高値で取り引きされているものだなど、エリオットは勿論アリアも知る筈はない。
最高級の肉に軽く塩と胡椒を振り、シンプルに味付けをしたアリアは、それを油を敷いたフライパンで焼き始める。
「…、余計な味付けはしない、ってか」
逆にそれが美味しそうだ。
ステーキを焼いている間にスープの鍋にじゃがいもを投入し、少し火を強めて短時間で一気に煮込む。
ステーキが両面にさっと火が通り、間がほんのりと赤い良い具合のミディアムレアに焼き上がった頃、アリアは鍋の火も止めた。
「……ん、出来たよ」
「…美味そうだな」
くしゃくしゃ、彼女の柔らかい金髪の頭を撫でる。
褒められて嬉しそうにエメラルドの瞳を細めたアリアは、さっと料理を皿に盛って食堂のテーブルへ運んで行った。
ちょこちょこと働くアリアを手伝うよう、エリオットも食器を運んでやる。
「…ん」
自分の為に椅子まで引いてくれた甲斐甲斐しい雛の髪を撫でつつ、エリオットは彼女の着席を待って食器を取った。
「いただきます」
「……どうぞ」
珍しく少し堅い表情で此方を窺う視線を受けつつ、エリオットはフォークでステーキを口に運んだ。
切り心地も柔らかく、口の中では溶けるように広がる。
「…美味い」
「…ん」
ぴょん、と頭の一本毛…触覚が嬉しそうに上を向き、アリアの顔がぱぁっと晴れる。
にこにこと嬉しそうなアリアを見て、エリオットもふっと瞳を細めて倖せそうに笑った。
「…美味しいよ、アリア」
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アリアの設定補完……のつもりで書いたら、ただのアリアちゃんお料理教室だった!(笑)
スープはポトフみたいなイメージで。ステーキはね、いいお肉はシンプルが一番美味しい的な感じですw
ドラゴン肉はちょっと癖があるけど、美味しくて高級な珍味として一部では取り引きされていたりします(笑) あんまり有名ではないので、エリオは知らなかったようですがw
11/9/1
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