short
いつもの二人
「お、アリア」
不意に廊下で呼び止められた小柄な少女は、ぴくっと頭に立った一本の癖っ毛を揺らして振り返った。
「リオ」
彼女を呼び止めたのは当然、火クラスの三年次生エリオット=ロッド。
風クラスの一年次生であるアリアとは一見あまり接点は無さそうだが、学内では結構有名な二人だったりする。
手招きするエリオットにぱたぱたと近寄って行ったアリアは、エメラルドの瞳をくるくると瞬かせて長身の彼を見上げた。
「ビスケット。食べるか?」
「ん」
エリオットがポケットから取り出した包みを解くと、アリアはあーんと餌を強請る雛鳥のように口を開けた。
ポイッとエリオットが彼女の口の中にビスケットを放り、さくさくとアリアが無表情のまま嬉しそうに咀嚼する。それを見て、エリオットは満足そうに微かに口の端を上げた。
…この餌付け、二人が学内ですれ違う度に毎回のように行われている光景なのだ。
元よりエリオットが学内では有名人である為に目立ち、この何となく微笑ましい光景は学内の名物となりつつある。それだけで終わるのならば、何も文句は無かったのだが。
もぐもぐとビスケットを頬張るアリアの、口の端に付いたビスケットの粉を指先で払ってやりながら、エリオットはふと気付いたように言った。
「…ん? アリア、唇なんかカサカサしてんな。乾燥か?」
「…んぅ?」
ぺろっと唇を舐めたアリアが、きょとんとして首を傾げた。
その淡い桃色の唇を確かめるように身を屈めたエリオットは、ふにっと微かに荒れた唇に指で触れる。
「んー、少し荒れてんな。…お前薬は持ってるか?」
「ん、一応」
「貸してみろ」
ずるずると裾の長いローブのポケットを探り、ほとんど使われた形跡のないリップクリームをエリオットに差し出す。
それを受け取るついでに、エリオットは身を屈め、微かに荒れたアリアの唇の上に軽く口付けを落とした。
チュッ、と軽やかなリップノイズ。直ぐに離れたエリオットは何食わぬ顔をしているが、ほのぼのと見守っていたギャラリーはポカンと口を開けて彼らを見やる。
「…あー、やっぱカサついてんな」
「んっ…」
「ほら、薬付けてやる」
そのまま何事も無かったように、アリアの唇にクリームを塗ってやるエリオットと、それを何事もなく受け入れるアリア。
周囲の呆然とした様子になど気付く筈も無く、エリオットは塗り終わったリップクリームをアリアに返した。
「ほら。ちゃんと塗って治せよ。俺がキスする時、カサついてんの嫌だからな」
「ん」
さらっと甘ったるい発言をしたエリオットは、くしゃくしゃとアリアの頭を撫でてから踵を返した。
「じゃ、また後でな」
「ん、また…」
ひらひら、手のひらを振ったエリオットは次の授業へ向かい、アリアもぱたぱたと反対の方向へ歩き出す。
あまりにナチュラルな二人の様子に、呆気に取られた周囲の生徒を残したまま。
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エリオとアリアの日常(笑) ほのぼの癒やし親子かと思ったら、ただの公害カップルでしたというお話w ←
エリオはさらっとアリアにキスするし、特に葛藤なくさらっと抱く筈 ←← 「だって俺のだし」的なノリ。アリアもエリオのする事なら普通に受け入れる。爆弾バカップル(笑)
エリオが驚いてた補完を書かなきゃと思ってたのに、気付いたら全く関係のないただのバカップルネタでしたw
11/7/30
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