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「…お前、腕に覚えがあんのは知ってるが、ああいう場合は逃げろよ! 何かあったらどうすんだ!」
「結果的に問題なく倒したんだから、いいじゃねえかよ」
バシッと一発肩を叩かれ、エリオットはぶすっと言い返す。
教師陣の中でも比較的若い彼、ポール=ラスター教諭は屈託が無く、歳上に対し不遜気味なエリオットに対しても気さくに話しかけてくる数少ない教員でもある。
彼の熱血気味な適度なウザさがエリオットは嫌いではないから、緩く首を振って嘯く。
「ってか、あんなドラゴンの一匹や二匹楽勝だっつの」
「お前なぁー! …ってか、そっちのちっこいのもだぞ!」
「……」
ポールに突然矛先を向けられたアリアはびくっと肩を揺らし、エリオットの後ろに隠れた。
実は人見知りする性質なのであろうか。背中にしがみついてくる彼女の半身を再びローブに隠しながら、エリオットは肩をすくめる。
「ちょっとセンセイ、ウチの子あんまり怖がらせないで貰えます?」
「なっ、俺は当然の注意をしただけだぞ! …ってか、ウチの子って」
「俺が産んだんで」
「マジか!」
気軽にこういう冗談を飛ばし合えるのが、彼が生徒たちより愛される所以だろう。
エリオットのローブにもこもこと身を埋めたアリアは、倒れたドラゴンをじっと見つめてからくいくいとエリオットの袖を引く。
「どうした?」
「…ん」
「ん?」
振り返ったエリオットにアリアが視線で示すのは、エリオットの魔法で鱗を焼かれたドラゴン。
「…青いドラゴンは、お肉をステーキにすると美味しいの…」
「は?」
「…食べきれない分は、塩漬けして干し肉にして、骨で出汁を取ったスープにすると美味しいの…」
じぃっとエリオットを見つめ、訴えるエメラルドの瞳は真剣そのものである。
「………マジか、お前アレ食いたいのか」
「…食べないの?」
「うーん…?」
当たり前のように訊き帰され、エリオットは首を捻る。
ねぇねぇと訴えるアリアの肩に手を添え、エリオットは側できょんとしているポールに声をかける。
「ウチの子があのドラゴン食べたいって言ってるんすけど、ブルードラゴンって食用でしたっけ?」
「えー…? …あっ、でも確か、民俗学のクライン教授がドラゴンを狩って食べる地方があるって言ってた気がする…」
「へー…?」
このアカデミーは大きく、魔法の才を持つ者なら大陸から広く学生が集まる。
都市育ちのエリオットには信じ難いが、そんな風習のある地方もあるという事か。
「…お前ん家の方では、普通に食べるのか」
「ん」
「へぇ…」
頷く彼女の瞳はくるくると輝き、思考はすっかりあのドラゴンをどう料理するかに飛んでいると思われる。つくづく食い意地の張った少女だ。
そんな彼女に餌を与える事が最近専らの趣味となりつつあるエリオットは、その頭を撫でポールを再び振り返る。
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骨はいいお出汁が取れるのですww
11/7/19
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