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「…だめ?」
「駄目。俺以外から安易に物貰うな」
ぴしゃりと言うと、アリアがしょぼんと肩を落とした。
素直な反応に、思わず笑いが漏れる。
「…まぁでも、俺は菓子くらいなら持ち歩いてるから、いつでも来ていいぞ」
「ん」
こくんと頷く、金髪の小さな頭。
エリオットは会場内を見渡した。…残り二人となった出場者の様子を、観衆は固唾を呑んで見据えている。
「……さて、そろそろおしゃべりは終わりだ。怪我させない程度に倒してやるよ」
「……」
纏う雰囲気を変えたエリオットに、アリアが一歩後退った。
彼女を取り巻く風が強くなったのを感じ、エリオットは微かに眉を寄せる。
怪我をさせない程度に、とはいえあの風の結界は厄介だ。ただ炎を放っただけでは、彼女に届かない。
(…さて、どうするか…)
エリオットが思案する間、何故か観衆がざわめき始める。
不思議に思ったエリオットが顔を上げたのと同時、不意に太陽が陰ったように辺りが暗くなった。
「…な」
「リオ!」
頭上を見上げようとした刹那、鋭い声と共にアリアが飛び付いてくる。
小さな躰とはいえ渾身の体当たりに、エリオットは思わずバランスを崩して尻餅を付いた。
構わずにしがみついてくるアリアを中心に、エリオットを取り込んで風の結界が渦を巻く。
「って……何事だよ…!」
「上!」
「…な…!?」
地面に座り込んだエリオットの膝に乗り上げ、アリアが頭上を示す。
日差しを遮っていた、巨大な影。
人々が慌てふためき逃げ惑うフィールドを見下ろすのは、青い鱗を持つドラゴンだ。
「…何でこんな所に…ドラゴンが…!?」
「ロッド、ハーディー、逃げなさい!!」
場外から、教師だろう誰かの叫ぶ声が聞こえる。
エリオットはその声で混乱から戻って来ると、しがみついているアリアを見下ろした。
「おい、大丈夫か?」
「アリィは大丈夫。…アレ、退治しなきゃ」
「…退治って…、お前出来んのか?」
「大丈夫」
「そうか」
ハッキリと頷いたアリアに、エリオットは彼女を膝の上から退かせると立ち上がった。
隣に立つアリアの“風”は、おそらくエリオットにも有効だ。ブレス攻撃くらいならば散らせるだろう。
「…なら、行けるか」
「ん」
エリオットが不敵に笑うと、アリアもこくんと頷く。
真っ直ぐに杖を構える。狙いは勿論、青い竜だ。
「…ロッド! ハーディー!」
「これくらい、軽い軽い…!」
叫ぶ外野の声など構わずに、エリオットの杖から火が飛び出した。真っ直ぐに飛んで言ったそれは、ドラゴンの巨大な躰を取り巻く。
破壊の性質を持つ、赤い炎。サラマンダークラス随一の火力は、伊達ではない。
竜の鱗を焼く炎に、隣で杖を構えたアリアの風が取り巻く。炎を煽る風に、エリオットの炎は更に勢いを増した。
11/7/16
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