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エリオットとアリア T

アカデミーと呼ばれるこの学園では年に一度、『学内個人対抗魔法合戦』というものが行われる。まぁ、言うならば生き残った者勝ちのバトルロイヤルだ。

多数の相手を殺さない程度、再起不能にしない程度で倒して行き、最後の一人が優勝。学校癒師が優秀だとはいえ、かなりぶっ飛んだルールである。

毎年結構な数の負傷者が出るが、一応生徒も節度は守っているのか死者は出た事はないそうだ。…ポイントが生死にかかっている時点で、かなりデンジャラスな学校行事である。

もちろんこんな危険な行事、全員参加が義務な訳はなく、基本的に有志参加。

土属性の者たちはあまり戦いには興味の無い変わり者が多いし、水も一部を除きあまり攻撃には適していない。となると、実質この行事に参加するのは、攻撃特化型の血の気の多い火か、腕に覚えのある風…。


「…まさかお前が後者の方だとは、思わなかったがなぁ…」


狂宴のバトルフィールド、爆炎や暴風が吹き荒ぶその場所に悠然と立ちながら、エリオットは呟く。

その視線の先には、周囲に風を取り巻かせた金髪に深緑の瞳を持つ小さな子供。見慣れたエリオットの“雛鳥”。

ここ一ヶ月程、学内で出会う度にチョコレートやビスケットを与えてきたというのに、此処へ来てやっとエリオットは彼女の名前を聞いた。


『――さて、戦いもいよいよ終盤! 生き残っているのは、シルフクラス一年次生のアリア=ハーディー、そして前年度優勝者のサラマンダークラス三年次生、エリオット=ロッド!』

「……お前アリアっていったのか。シルフクラスなのは知ってたが」


制服の襟に所属クラスを示す紋章のバッチが着いていたから、辛うじて風クラスなのは知っていた。けれど、彼女は自分から名乗る様子はなく、エリオットも何となく聞きそびれていたから、今この場までその名前を知る事がなかったのだ。


「…ったく、お前に何回菓子食わせてんだと思ってんだ」
「……でもアリィも、知らなかった」
「ん? …あぁ、俺の名前か、名乗らなかったっけか?」


少し拗ねたような声に訊けば、こくんと頷くアリア。

そうか、それならばお互い様だ。


「…それじゃ改めまして、サラマンダークラス三年次生、エリオット=ロッドだ」
「…リオ」
「そこから取るのか。…まぁ、好きに呼べばいいさ」


微かに笑いながら、エリオットは相変わらず真っ直ぐに此方を見上げるアリアの深緑の瞳を見返した。


「聞いての通り昨年度の優勝者だ、悪いけど負ける気はねぇぞ」
「…アリィも。勝ったら、お菓子もらえる約束してるから」
「はぁ? 誰にだよ?」
「…せんせい」
「食い物で釣ったのは何処の教師だ、ったく。…お前もほいほい釣られてんじゃねえぞ」


いつも自分がアリアに餌付けしている事は棚にあげ、エリオットは軽く説教口調で告げる。

素直なアリアはぱちんと瞳を瞬かせ、ちょこんと首を傾げた。


11/7/16

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あきゅろす。
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