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short
opening

――ズルズル……ボテッ!


後ろから聞こえた随分と不格好な音に、廊下を歩いていた三年次生、エリオット=ロッドは振り返った。


「………」


思いの外近い距離で、金髪の小さな頭がうつ伏せに倒れている。

…転んだのか、転んだんだな。

しかし、こんなに見事に…下手くそに転ぶとは…。おそらくは制服のローブを着慣れていない新入生だろうが、それにしたって一年次生は最低でも15歳にはなっている筈。こんな幼児のように転ぶとは、一体何事だろうか。

普段は他者に無関心なエリオットも、この時ばかりは興味半分呆れ半分にその学生を助け起こした。


「…おい、大丈夫か?」
「………」


不幸な事に、古い石廊だ。

べったりと全身で転んでいる小柄な学生の手を掴み、やや乱暴にエリオットはその小さな躰を引っ張り起こしてやる。


「ほら、ちゃんと立て」
「………」


無気力に引っ張り起こされた子供の制服の埃を、ぱたぱたと払ってやる。

…何もここまで世話を焼いてならなくても、とも思うが、起こされた姿勢のまま棒立ちしている様子を見ると、どうにも手を貸してやらずにはいられない。


(…変な奴だな…)


上級生に助け起こして貰ったにも関わらず、お礼の一つどころかリアクションすら返さない。

自分より頭二個分近く低いだろうかというその金髪の頭を見下ろし、エリオットはため息を吐いた。


「…おい」


声を掛ければ、真っ直ぐに見上げてくる深い緑色の瞳。

エリオットがため息混じりの二言目を発するよりも早く、きゅーっ…と訴えかけるように子供の腹が鳴った。


「…おなか、すいた…」
「………」


じっと真っ直ぐな瞳でエリオットを見上げ、ぽつりとそう呟く子供。


(…やっぱり、変な奴…)


呆れ気味に息を吐いたエリオットのローブの裾を、子供の小さな手のひらが何か訴えるように摘む。

じぃっ、と真っ直ぐに見上げてくる深緑の瞳。


「……、はぁ」


その視線に耐えかね、幾度目かのため息を吐いたエリオットは、ごそごそとローブのポケットを探った。

確か、半強制的に絡んでくる友人に押し付けられた駄菓子があったと思ったが…。


「…あった」


コツンと指先に当たったのは、チョコレートの小さな包み。

一口大のそれの包みを剥いで差し出すと、子供は雛鳥のようにパクッと口を開けた。


「ほら」


開いた口に、ぽいっとチョコレートを投げ込む。

エリオットの与えたそれをむぐむぐと咀嚼する姿は、本当に雛鳥のようだ。


「…マジで変な奴」
「……?」


遂にそう声に出して呟けば、子供はきょとんと深緑の瞳を瞬かせた。

その姿に小動物的な可愛らしさを見出したエリオットは、柔らかい金髪の頭をくしゃりとやって表情を緩めた。


「…午後の授業始まるぞ、早く戻れよ」
「……ん」


とん、と額を押してやると、子供はぺこっと頭を下げ、ぱたぱたと廊下を駆けて行った。

その制服の裾は、随分長い。また転ばないだろうか。

廊下の向こうへ消えていく後ろ姿を眺めながら、エリオットはぼんやりと思う。


(名前聞き忘れたな…)


…まぁ、同じ学内に居るのだ、また見掛ける事もあるだろう。

ばさりとローブの裾を翻し、エリオットも踵を返した。顔には彼にしては随分珍しい、微かな笑みを浮かべながら。














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発作的に書きたくなった、異世界魔法学校もの。…まだ異世界要素も、魔法要素もほとんど無い(爆) 妄想の中ではいっぱいあるけれどもw


とりあえずな設定

→ 学校は高校+大学の歳で七年制(一年次生=高一、四年次生=大一)。留年はあるけど、入学する時に浪人はない。

→ 生まれ持った属性(四大要素)によってクラス分けがされていて、卒業まで変わる事はない。クラスには精霊の名前が付いてる(火→サラマンダークラス、風→シルフクラス)。

→ 火は攻撃特化、水は回復や補助、風は防御他全般(汎用的)、土は補助や精製なんか。風は扱いが難しく、土はちょっと変わり者な傾向がある。


厨二? はい、知ってます(爆)


11/7/13

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あきゅろす。
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