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傍観者の日常
時は昼休み、つまりは食事時。
食堂の特別席である二階席では、今日も不毛な戦いが繰り広げられている。
「由貴(ゆき)の隣には、私が座ります」
「フクカイチョー抜け駆けはダメー、俺がゆきちゃんの隣に座るんだからー」
「先輩、俺の隣ですよね?」
「……ゆき、となり」
腹黒副会長、チャラ男会計、眼鏡庶務、ワンコ書記。学園のトップ集団がぎゃあぎゃあ騒ぐ中心には、モジャモジャのマリモ頭。
「あぁもうーっ、俺は早くメシ食いてえだけなんだけどっ!」
今日も賑やかな一団を少し離れた場所から見守りつつ、春氷(はるひ)はテーブルの上の急須からトポトポと緑茶を注いだ。
「…間宮(まみや)会長も飲みますか?」
「頂こう」
隣に座った、生徒会で唯一冷静を保っている間宮暁(さとる)の湯呑みに緑茶を注ぎ、春氷は席に座り直す。
「佐上(さがみ)も勝手に食べてればいいのに…」
呟いて春氷は、未だ騒ぎ続ける集団の中心、二週間前に編入してきたばかりの同室者、佐上由貴を見やった。彼の隣の席を巡っての争奪戦は、まだまだ白熱の最中である。
春氷が注いだ緑茶を啜りつつ、同じく集団を眺める暁が興味無さそうに言う。
「…今日は誰が勝つと思う? デザートでも賭けないか?」
「えー? それじゃ会長が負ける時と俺が負ける時と、ダメージがかなり違いませんか? 無料特典あるクセに」
「じゃ、お前が勝った場合だけ俺が奢ってやる。ペナルティ無しで」
「お、マジっすか?」
暁の言葉に、春氷はドングリ眼を輝かせた。現在の戦況を見、早速予想を立てる。
「…昨日は副会長が勝ってましたしー、今日は井川(いがわ)書記に軍配が上がるんじゃないかな、と」
「ふぅん。…じゃあ俺は、智佐(ちさ)の連勝に賭けるわ」
自分たちをネタに緩い賭けが行われているとも知らず、未だ白熱した戦いを繰り広げる彼らを、昼食を食べながら見守る。
春氷が天ぷら蕎麦を、暁が海鮮丼を食べ終わる頃、最終的に由貴の「ジャンケンすればいいだろ!」という発言により今日の戦いは決着が着いた。
「…井川書記の勝ち、ですね」
「……つまり、お前の勝ちだな」
由貴の隣に収まって満足顔のワンコ書記と、得意気に天ぷらの屑が付いた唇を釣り上げる春氷。
その唇の端を指先で拭ってやりながら、暁は肩をすくめた。
「デザート、何がいい?」
「イチゴパフェ!」
「はいはい、と」
ウエイターを呼び寄せる暁の隣で、春氷は笑った。
そんな傍観者な、僕らの日常
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傍観やる気無し会長×傍観お気楽同室者。こんな脇役カプも良さげだなー、と思ってざこざこ書いてしまった(笑)
まだ恋よりは友情寄り。すごく…平和だ(爆)
10/2/12
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