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スメラギ
8

確信めいて呟いた鈴に、翡翠は目を細める。

彼のかざした右手の中指にはめられた、細身の銀色の指環。その形良い長細い指を自然に飾っているので気にならなかったが、良く見るとそれは…。


「……流石に、入試で満点を取っただけはあるんだな」


感心したように翡翠が言う。先程の子供扱いを思うと、褒められてもなんとなく素直に喜べないが。

エレベーターが静かに上昇して行き、ふわりと躰が小さな浮遊感を感じた。


「ソレ、魔法具ですか?」
「あぁ。…この学園では基本になる事だ、説明しておいていいだろう」


鈴の問いに翡翠は頷き、右手を鈴の側へ差しのべる。

鈴がそれを覗き込むと、遠目には意識しなかったその特殊な材質に気付く。


「ミスリルだ…」
「あぁ。灯燈では学生情報の管理に、この〈指環〉を使っている。専用の機械にかざせば情報が取り出せる、まぁ学生証の代わりみたいな物だ。それから、寮の鍵や食堂の食券なども兼ねているな」
「へぇ…」


形良い指を彩る細い白銀に、それだけの情報が詰まっているのか。魔法具としてそれなりに優秀な物だ。


「俺のはミスリル製だが、これはその生徒の所属によって材質が分けられている。生徒会役員や各委員会の委員長、それから各学年の首席と次席はミスリル。各委員会所属の生徒、学年で成績が十位以上の者はプラチナ、それ以外の一般生徒がシルバーだ」


なんだ、生徒全員分にミスリルの指環なら、大奮発だなと思ったのに。

魔法銀とも呼ばれるミスリルは、この世界では金よりも貴重な品だ。
材質の丈夫さ軽さ美しさなどもさることながら、その魔力を豊富に蓄える性質が特徴であり高級となる所以だ。


「ミスリルやプラチナの指環を持つ者は、それなりの責務を負う代わりにいくつかの特権が与えられる。…例えば、この理事棟のエレベーターを動かせるのはミスリルの生徒だけだ」
「へぇ…」


それらがそれなりの責務、とやらに似合うだけの特権なのかは、この学園のシステムを詳しく知らない鈴にはわからない。

ただ、ミスリルは図書館の一部の禁書などを閲覧出来る事なども出来るらしいから、それは良さそうだな、と鈴は思う。


「入試で首席のお前もミスリルだ。期末試験で順位が入れ替わる事もあるが……、まぁ大丈夫だろうお前なら」
「あぁ、はい」


首席及び成績上位の生徒の特権は、その成績に応じたご褒美という扱いらしい。その「それなりの責務」とやらを負う必要がないのは、気が楽だ。

エレベーターが最上階に着き、翡翠は差しのべていた手をすっと引いた。

…指環を、そして形良いその指を眺めていた鈴は少し残念だなと心中で小さく呟く。


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あきゅろす。
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