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スメラギ
校内散歩

* * *



今日は入学式だけでおしまい! 明日のLHRで委員会とか決めるからな!、と元気良く言った担任の大紀によって、1-B1は解散となった。


「鈴、この後はどうするんだ?」
「寮に帰る?」


訊いてきた御門と雅弥に鈴は暫し考えるように首を捻った後、ふるふると首を振った。


「せっかくお弁当作って来たし、今日は学校の中をお散歩してみる」
「そっか、って弁当なんていつ…」
「朝だよ。ほら、コレ」


言って、鈴はデューイにくわえさせたバスケットを示した。

朝、あれだけの朝食を作って尚且つ昼食用の弁当を作る暇もあったのか…、恐るべし、鈴。御門と雅弥は顔を見合わせ、肩をすくめた。


「散歩って、一人でか?」
「うん。いろんなトコ行ってみたいし」


御門の問いに、鈴が頷く。

元来何事にも縛られない鈴は、気ままに散歩しようと決めたらどこまでも気ままだ。
灯燈の敷地はかなり広そうだから、端から端まで遊び歩くかもしれない。


「そっか、じゃあ変質者にはくれぐれも気を付けて行くんだよ」
「……学校にいるの? 変質者」


保護者のように言った雅弥の言葉に、鈴は思わず怪訝そうに訊き返した。

冗談だとも思ったが、雅弥は真面目に頷く。


「いるね。だから気を付けて」
「…うん、気を付ける…」


此処ってどんな学校なの、伯父さん…。と、思わず心の中で樹に呼び掛け、鈴は苦笑いして頷いた。

昼食の入ったバスケットをデューイに預けている鈴は、身軽な躰一つでほいほいと敷地内を歩き出す。

そんな鈴を見送った二人は、顔を見合わせて今度は互いの予定を問う。


「…さて、俺らはどうする?」
「うーん、俺は部活見学にでも行こうかと思ってたけど。愛紗も高等部の空手部見に行くって言ってたし」


1-B2はホームルームが長引いているのか、真っ先に飛んで来そうな愛紗はまだ1-B1を訪れていなかった。

鈴が一人で遊びに行った事を知ったら、悔しがるかもしれない。彼はついて行きたがるタイプだ。

一方鈴が一人で行きたがっているようだと何となく察していた二人は、学園に不馴れな彼を一人で出歩かせるのを心配しつつも望む通りに行かせた。余計な揉め事を起こさない為にも、これで良かったのかもしれない。


「うーん、俺らも解散にするか? 俺は部活やる気はないし、お前らもそれぞれ目当てあるだろ?」
「そうだね、じゃあそうしようか」


廊下から駆けてくる聞き慣れた足音を聞きつつ、二人は互いに手を振った。


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