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スメラギ
5

(…何処かで見た顔? まぁ、向こうは此方を知らないかもしれないけど)


教師が高位の《ウィザード》であるなら、何処かで鈴も見掛けた事があるかもしれない。

まぁ、だからと言って“知り合いでない”のなら大した事ではないけれど。

鈴と雅弥が席に着く頃、ざわついていた他の生徒たちも大人しくなり、教壇の若い教師は教室を見渡した。


「えーと、まずはみんな入学おめでとう。俺は今日からみんなの担任を務めさせてもらう、的井大紀(まとい だいき)。教師歴はまだまだ浅い若輩者だけど、よろしく頼むな」


はにかむ様に笑ってみせる大紀に、よろしくお願いしまーす、などと小学生のように声を揃える1-B1一同。

威厳よりは親しみを前面に出しているらしい彼に、クラスもまた親しみをもって応じたようだ。


「とりあえず最初のHRの前に入学式だ。みんなの晴れ舞台だから、キチンとした格好でな」


はーい、とこれまた明るい声が上がる。

妙なテンションに耐えきれず、何人かが吹き出す声も聞こえた。


「…あっ、そうだ新名」
「はい?」


鈴の後ろで悪ノリを楽しんでいた雅弥が、いきなり水を向けられ声をあげる。
鈴もまた振り返り、雅弥と大紀を交互に見つめた。


「新入生代表挨拶、頑張ってな」
「あぁ、はい」


雅弥は何だその事か、などと言って涼しい顔に戻ったが、鈴はぱちぱちとその甘そうな瞳を見張った。


「え、雅弥君入学式で挨拶するの?」
「…あぁ、初等部からこれで三度目だよ。基本的に成績優秀者がやる事になってるんだけど、今まで首席、今は次席のAクラスの子は人前で喋るの苦手らしいから」


毎回次席、今は三席である雅弥の元にお鉢が回ってきていたのだと言う。

へー、すごーい、などと雅弥を見る鈴に、彼は悪戯っぽく笑った。


「首席の鈴にもその資格はあるよ。…外部生だから候補からは外れたらしいけど…、何なら俺の代打やってみる?」
「え、無理だよ」


ぱちぱちと瞬きをした鈴は、冗談にも近いその提案を即答で却下した。

新入生代表挨拶とやらは面白そうではあるものの、そんな事をしたら全校生徒の……兄の目に触れてしまう。

これはこれでインパクトが強そうだが、すぐ近くでそのリアクションが見れないのなら意味がない。

そんな理由で鈴はそれを却下した訳だが、雅弥はそんな事を知るよしもなく、まぁ当たり前だよね、と頷いた。


「まぁ俺に任された仕事だから、俺が最後までちゃんとやるよ。慣れてるしね」
「じゃあ、僕は応援してるね」
「ありがとう」


よくわからない主旨の会話が完結する頃、担任の話も終わったらしい。

講堂へと移動する為立ち上がる生徒たちの波と一緒に、鈴は御門と雅弥の後に続いた。


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