スメラギ
3
* * *
教室前で隣のクラスの愛紗と別れ、1-B1の教室に入ると、まだ時間も早いせいか人はまばらだった。
が、数人いた新しいクラスメイトたちは御門と雅弥に挟まれている鈴を見て、一様に目を丸くした。
「えーと、おはようございます……?」
こてん、使い魔を乗せた頭を軽く傾げ鈴はその微妙な空気に戸惑いながらも、とりあえずこの状況に適切であろう挨拶を絞り出す。
鈴たちと同じく、まだ新しい高等部の制服に身を包んだ彼らは、ぱちぱちと目を瞬かせてから曖昧に言葉を返した。
「あ、あぁ、おはよう…」
「おはよう…」
返事は一応返ってはきた。が、何なのだろうか、その珍獣を見るかのような好奇の視線は。
「…もしかして、アレ…?」
「小さくね? ホントに同い年?」
「でも、首席なんだろ?」
「満点らしいぜ? ……有り得ないよな」
「なんか、あの浅倉と新名に挟まれてるし」
「見た目、普通そうだよな…?」
もしもし、聞こえてますよ。
こそこそと数人で囁き合うクラスメイトたちに、鈴は肩をすくめた。
確かに昨日も幾人かには、『外部生』というだけで奇異なリアクションを頂いていたけれど。
(…いくらなんでも、これはねぇ…)
「……一応言っとくけど、こいつらはまだマトモな方だぜ?」
「え?」
鈴が内心でなんなんだと呟いていると、右隣の御門がごく小さな声で言った。彼の言葉を引き継ぐよう、左隣の雅弥が続ける。
「B1は一応成績優秀クラスだけあって、“バカ”は少ない。今は珍しがってはいるけど、慣れればマトモな奴らだから安心していい」
「安心って…?」
「下手にちょっかいかけてくる奴はいない筈だって事。多分ね」
さ、いつまでも入り口に立っててもなんだから早く教室に入ろう。と、上背のある雅弥に押されてしまい、鈴は軽くよろけながら教室内に入る。
詳しい事は追々話してあげるから、と言われてはこれ以上この場で言及は出来ないのだろう。
鈴はやや釈然としないながら、けれど折角の新生活、爽やかな気持ちで始めようかと気にするのを止めた。
「席、どこかな?」
「永峰…だから真ん中よりちょっと前くらいか。あ、雅弥の前じゃん?」
「御門は一番か、また」
「面倒多いからヤなんだけどなぁ、一番って」
黒板に貼られた座席表を見ながら、わいわいと話をする。
話を聞けば、毎年成績順でクラスの大半は入れ替わらないから、ほとんど場所は指定席に近いらしい。
「今年は鈴がいるから、ちょっとズレてるみたいだけどな」
「鈴より前はほぼ変わらないけどね」
とりあえず座席をチェックしてから、けれど朝礼まで馬鹿正直にそこに座っている必要もないだろうと三人は一番近かった御門の席の周囲になんとなく集まった。
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