スメラギ
2
「うーっ、ホントムカつく! お前らっ! 雅弥はずっと次席キープだったし、御門も見た目そんななのに、プラチナから落ちた事ないとか詐偽だっ!」
愛紗の叫びを聞きながら、指環の話かと記憶を辿る。確か、学年で成績が10位以内ならばプラチナクラスだったか。
雅弥も御門も、かなり頭がいい方らしい。
「詐偽って言われてもな」
「いや、俺は今年落ちたしね? 鈴が来たから」
「えっ?」
愛紗の絶叫に各々苦笑いした二人。雅弥の台詞に突然自分の名が含まれ、他人事体勢で聞きに入っていた鈴は目を見張った。
振り向くと、雅弥が笑いながらひらひらと手を振った。
「俺、今年は三席です。全教科満点の外部生がいるからね、今までの順位が入れ替わったんだよ」
「それは、えっと……」
謝罪するべき事柄ではない。が、何と応えたらよいのだろう。
思いがけずリアクションに困る事実に鈴が微かに表情を引きつらせると、御門が肩をすくめた。
「お前が気にする事じゃねぇだろ。試験は実力なんだから」
「まぁね。俺だって別に、次席に執着してた訳じゃないし」
「え、…うん」
気にするなと、二人にぽんぽんと肩を叩かれた。
鈴が首を捻りながらもそれに頷けば、仲間外れにされた愛紗が便乗するように鈴の背に抱きつく。
「お前ら、オレを置いてきぼりにすんなっ!」
「いや、だって話の流れ的に愛紗はあんまり関係ないし」
「ヒデェ!」
「愛紗は成績は下がるんじゃなくて、上がったろ? 実力で、さ」
「おっ、おう」
バッサリと斬る雅弥の台詞を、御門が横からフォロー。吠えていた愛紗も、褒められた為口を閉じた。
三人の力加減が垣間見えるやりとりに、彼らに囲まれた鈴はにこりと笑った。
「…みんな、仲良しさんだねぇ」
「えっ」
「あ、あぁ……」
「…まぁ、ね」
にっこり笑った鈴に毒気を抜かれたか、三人は一瞬虚を付かれたように目を丸くする。ついでにすっかり足が止まっていた事に気付き、ちょうど鈴を囲む様にしていた型を崩した。
鈴はにこにこ、他三人は微妙な表情といった、妙な空気を破るべく、雅弥が軽く咳払いをした。
「まぁ、とにかく俺と御門とクラスは一緒って事だから、鈴。分からない事があったら何でも訊いてね」
「うん、ありがとう雅弥くん」
そろそろ、校舎が見えてきた。
新しい生活の舞台は、すぐそこだ。
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