スメラギ
1-B1
* * *
デザートとして自家製ヨーグルト(これは家から送ってきていたらしい)を楽しんだ四人は、各々に真新しい高等部の制服を整えて寮の部屋へ出た。
オフホワイトを基調としたブレザーに、ズボンはブレザーの袖や襟に入れられたラインと同色のチャコールグレイ。無彩色の上着に映えさせるようにか、中に着るシャツは学年に合わせて薄く色が付いている。
今年度は三年がピンク、二年がブルー、鈴たち一年がグリーンだ。ちなみに、ネクタイの色も各々の同系色のダークカラーとなっている。
「…あれ、愛紗君、ネクタイ曲がってるよ」
「え? あー、マジだ」
「ホラ、直してあげるね」
如何にも美少女めいた容姿とは裏腹に、愛紗は案外大雑把で妙に男気がある。
何処か大胆な結び目はシャツに対し全く水平にはなっておらず。それを見咎めた鈴は、彼の正面に回って常磐色のネクタイを結び直した。
「サンキュー」
「どういたしまして」
「へへ、何かこういうの新婚みたいだなー」
愛紗だって、同世代の少年たちと比べれば充分に小柄で華奢な方。
しかし、そんな自分よりも更に小さな鈴は、何故だか守らなければいけない対象のように思えた。
愛紗がやや低い位置にある鈴の頭をぽふぽふと撫でれば、傍らでそんなやりとりを見ていた御門が呆れたように呟く。
「…どんな百合カップルだよ」
「御門うるさい!」
「ぐっ……」
反射的にみぞおちを狙って繰り出された蹴りに、御門が小さく呻く。
そんな彼らに鈴は微かに目を見張ったが、雅弥はいつもの事といった調子で軽く流して廊下を歩き出した。
「……あ、そういえば、クラス分けってどうなってるのかな? 学校に貼り出されてる?」
寮を出て、暫し。時間がやや早いせいか登校する生徒はまばらな通学路を歩きながら、鈴はふと気付いたように言った。
横を歩く友人たちを振り返れば、何でもないような調子で雅弥が答えてくれる。
「…まぁ、学校に行けば貼り出されてはいるだろうけど…、鈴の場合はもう決定してるも同義でしょ」
「どういう事?」
「クラス分け、《クラス》別で成績順だから」
「入試首席の鈴は、自動的に《Bクラス》で成績が一番目のクラスって事」
眼鏡を直しながら、雅弥が振り返る。
「『1-B1』、それが鈴のクラスになってる筈だよ。ついでに、俺と御門も一緒」
「そうなんだ」
それを聞いて、微笑んだ。彼ら二人が一緒なら、安心だ。
……、二人?
「…あれ、愛紗君は?」
「……オレは1-B2。二人程頭良くないからな!」
素朴な疑問に問えば、拗ねたような声が返ってきた。
膨れる愛紗に、雅弥が肩をすくめる。
「…まぁ、B2に入れただけ良かったじゃんか」
「中等部は3組だったからなぁ」
「頑張った方だよ、愛紗」
「…………」
フォローを入れてくる雅弥と御門を、愛紗は渋面で見やる。
事情が分からない鈴は、彼らの様子をのんびりと眺めた。
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