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スメラギ
2

「初めまして、永峰君? 俺は新名雅弥、愛紗の同室で御門とも友達。昨日は色々忙しくて、挨拶が遅れてごめんね」
「はじめまして、雅弥君、僕の事は鈴でいいよ」
「それじゃあ鈴、今の話だと、俺も朝食のご相伴に預かれるのかな?」
「もちろん。……あ、卵とか小麦とか平気?」
「食物アレルギーなら、心配ないよ」
「そう、良かった」
「……って、何和やかに会話してんだお前ら!」


にこにこと自分を挟んでやりとりをする二人に、硬直から我に返った愛紗が叫んだ。

その声に鈴は幾度か瞼を上下させたが、雅弥はにこにこと含むように微笑んだままだ。


「あぁ、愛紗君はコーヒー? 紅茶?」
「あー…っと、じゃあ紅茶……」
「うん、分かった。さ、二人とも上がって」


愛紗の大声にやや驚いていた様子の鈴だったが、直ぐに自分のペースを取り戻して相手のペースを取り込んだ。

とことこと小さな歩幅で部屋へ戻る鈴を、二人は追った。ふわり芳しい香りが漂う。


「ベーグルはそろそろ焼けたかなぁ。プレーンとセサミとハーブがあるけど、どれ食べる?」
「俺は全種類食べたいかなー」
「じゃあオレは……ん? てかリン昨日ベーグルなんて買ってた?」
「うん、だから種から作ったよー」


昨日一緒に買い出しに行った愛紗の問いに、キリマンジャロを右手で、イングリッシュブレックファーストを左手で淹れていた鈴がのんびりと言った。

一瞬、愛紗と雅弥の動きが止まる。


「…えっ、作ったのか!?」
「うん」
「朝から?」
「あぁ、種は昨日の夜に作ったんだー」


返事をしながら、鈴はフライパンの上のオムレツを引っくり返す。

昨日のマカロンの話は聞いていたが、思った以上に本格派だ。面白いほどに、彼は見た目によらない。

雅弥は目を丸くしている愛紗の頭を小突いてから、ダイニングテーブルに用意された朝食を眺めた。

ふんわりと形良いオムレツは、ほうれん草とチーズ入り。彩り良く盛られたポテトサラダは、おそらく作り立てだろう。焼きたての香り芳ばしいベーグルは、言うまでもない。美味しそうだ。


「……今すぐお嫁に行けそうだね、鈴」
「…えーっと、それって誉め言葉?」
「もちろん」


クスッと笑った雅弥は、首を傾げる鈴からコーヒーの入ったカップを受け取った。

隣の愛紗も同じ様に、ティーカップを受け取る。


「そろそろ御門君を起こさなきゃね、僕ちょっと行ってくるー」


二人に席を勧めてから、鈴は隣の部屋に顔を突っ込んだ。


「おはよう、御門君。…わぁ、可愛いお部屋」


寝惚けた御門にものんびりながら抗う事の出来ないペースで遠慮なく振る舞う鈴に、二人は苦笑いした。


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あきゅろす。
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