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スメラギ
2

他のメンバーが休憩して体力を回復しているうちに、先程は監督に徹していた鈴もウォーミングアップをする。丁寧に柔軟する鈴を見て、小山がふぁーと声をあげた。


「永峰君、身体柔らかいね」
「そう?」


ぺたり、と開脚した脚の間に上半身を付けながら鈴は首を傾げる。


「なんかあれみたい、バレリーナ」
「……踊れないよ」


その形容は、褒められているのだろうか? 曖昧に笑って返す鈴だが、何故かチームメイトたちはきゃっきゃと楽しげだ。


「永峰君なら、踊ってても違和感ないのに」
「そうそう、何でも出来ちゃいそうだし」
「流石にバレエは経験ないかなぁ……」


この先体験する機会も、まずないとは思う。それならば、スポーツのバレーボールの方が現実的だ。

そんな事を思いながら柔軟をこなし、休憩の済んだメンバーたちと共にコートへ入る。

外野役は二人。狭山と、それ以外の面子の中では一番投げる事が上手かった青山(あおやま)というひょろりと背の高い少年だ。彼らはそのまま、本番の試合でも初期外野として入る予定である。


「…永峰当てるぞ」
「えぇ…」
「ふふ、そのくらいの気概でなくちゃ」


負けず嫌いに火が付いているらしい狭山は闘志たっぷりにそう言い、青山は戸惑ったように声をあげた。

鈴としては、やる気満々で来て貰った方が嬉しい。チームの地力を上げる為にも、自分自身の練習の為にもだ。

内野側からは当てるべき相手がいないので外野側がボールを持ち、準備は整った。時計を持ったデューイが、合図代わりに高く啼く。


『きゅー!』

「…っとりゃあ!!」
「わっ!?」
「あたっ!」


雄叫びと共に投げられたボールは、鈴の脇をすり抜けていきなり後ろにいたチームメイトに当たった。狭山が鈴を狙う、と言っていたから油断していたのか、それとも単純にボールのスピードが速くて避けきれなかったのか。

当てられたボールはころころと床を転がり、それを拾った青山に狭山は鼻を鳴らす。


「敵を欺くにはまず味方から」
「……、最初から僕じゃなくて他を狙ってたのか」
「永峰は手強いからな。相手すんのは後で、ゆっくりだ」


球技大会のドッチボールは制限時間内にどちらかのチームの内野が全てアウトになればその場で勝敗が決まるが、制限時間内に終わらない場合は終了になった際に内野に残っていた人数が多い方が勝利だ。

当てにくいだろう一人に狙いを絞るよりは、もっと当て易い多数を狙った方がいい。ニヤリと笑う狭山の作戦は理にかなっている。

頭に血が上っているのかと思えば、案外冷静に。それでこそチームの副主将だ。


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