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スメラギ
二日前

* * *



「…ふむ」


球技大会を二日後に控えた放課後。ほとんどが運動神経に自信がない面子だとは思えない程、精一杯練習に没頭するチームを見て、鈴はひとつ頷いた。

ひたすら避ける事の方が得意なメンバーが、狭山やデューイの投げるボールを必死に避けている。練習を始めた最初の頃は手加減されて投げられていたボールだが、最終調整に入った今、彼らはほとんど本気で投げている。しかし運動神経の良い狭山の投げる本気のボールを紙一重でもひたすらかわし続ける事が出来るくらいには、チームの回避力は上がっていた。


「前原マジで当てらんねえ!」
「ぜぇっ、ぜぇっ……あ、当たる訳にはいかないよ……」


特に、鈴の見込んだ前原少年の仕上がりは素晴らしいものだ。若干ムキになって投げ続けている狭山だが、その影を全く捉えられていない。

しかしこのままだと、元の体力の違いからそのうち狭山が優勢になってくるだろう。……が、球技大会のドッチボールは1試合10分。その間だけでも体力が続けば、何も問題はない。

手元の時計が、計っていた10分の経過を告げる。鈴は声を張り上げた。


「一旦休憩!!」
「……くそ、結局当てられなかった」
「良かった逃げきった……」


悔しげにため息を漏らす外野側と、ほっと安堵の息を漏らす内野側。彼らの為にスポーツドリンクを取り出しながら、鈴はにこりと微笑んだ。


「うん、ホントにいい仕上がりだね。みんな動きが最初とは比べ物にならない程良くなってる」
「ホント? あ、ありがとう」
「ん、みんなちゃんと水分補給してね」


順番にペットボトルを渡しながら、本気で悔しそうに歯噛みしている狭山の前で一言。


「おお ゆうしゃよ。ひとりもあてられないとは なさけない」
「だぁ!!」


笑顔でそう煽る鈴に、悔しげに声を荒げる狭山。

彼はチームの攻撃担当だ。内野側の回避が上がるのは結構だが、彼の方にも命中を仕上げて貰わねば困る。

鈴から受け取ったスポーツドリンクを一口で半分程飲みきり、狭山は呟いた。


「休憩したらもう一回だ。次こそ当てる」
「ひぇっ…!」
「ふふ、そうこなくっちゃ」


本気の眼になった狭山に、元来気の弱い内野側は怯えるが、鈴はくすくすと笑った。


「次は僕も内野に入ろうかな。デューイ、時計をお願い」
『きゅっ!』


使い魔の仔龍に無造作に時計を投げて渡すと、デューイはその爪で器用に時計をキャッチした。小さくても賢い使い魔である。


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あきゅろす。
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