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スメラギ
一週間前

* * *



球技大会へ向けたチーム練習も今日のところはひと段落し、御門は気分転換として校舎の裏庭を歩いていた。

陽も大分長くなってきた今、短くも厳しい練習をこなした後でも日没までの時間は暫しある。

御門たちバスケットチーム以上に濃密な練習をしているらしい鈴は、それでもいつものように帰ってすぐに自分と友人たちの分を含めた夕食を作っている。彼も疲れているだろうに毎日毎日よくやるものだと感心すると共に、ご相伴に預かれる事を感謝してもいた。

そろそろ鈴たちの練習も終わった頃だろうか、時計を見ながら首を捻る。出来れば夕飯の支度が終わるまでには帰って、せめて配膳くらいは手伝いたいが。


「…ん?」


そんな事を考えながら歩いていると、ふと何かの気配を感じた気がして足を止めた。

誰もいないとばかり思っていた裏庭の隅、最早見慣れてしまった金の髪が見える。


「……あっ」
「……、御門」


御門が小さな声を漏らすと共に、相手も此方に気が付いたらしい。

ぼんやりとした、感情を映さないセレストブルーの瞳が振り返って御門を捉える。ゆる、と瞬きの後、悪戯な笑みをその瞳は浮かべた。

彼に気付かれたと同時に、気付かれる前に去るという選択肢をなくした御門は、小さくため息を吐いて彼を見返す。


「…アンタ、って神出鬼没だよな」
「そう? そう言う御門だって、毎回狙ったように僕の前に現れるじゃない」


ため息を吐いた御門に、振り向いた孝雪がクスクスと笑う。

確かに、御門も大概校内の色々な所を散策しているのだが。それにしたって、孝雪との遭遇率は結構なものだと思う。


「……御門は本当に、僕の居場所を暴くのが得意みたいだなぁ」


小さな呟き。半分程しか聞こえなかったその声から、嘲りのような響きを感じ、御門は微かに眉を寄せた。


「……何だよ」
「別に、何でもないよ」


クス、と笑う声。一瞬だけ見せたヒヤリとした瞳の冷たさは、もう窺う事は出来ない。

それになんとなく御門は不快感を感じ、むっと顔を歪めた。その拗ねているような表情に、孝雪は瞳を細める。


「そうだ、球技大会の練習とかはないの? 御門」
「今日はもう、終わったところだけど」
「そうなの? お疲れさま」


不意に変わった話題に応えると、孝雪は薄い笑みと共に薄っぺらな労いを返す。

突然何が言いたいのだろうか。怪訝な表情をする御門に、少し離れた場所にいた孝雪が近付いてくる。

反射的に後退りしかけ、逃げても仕方ないだろうと足を止めて孝雪を見る。すたすたと軽い足取りは、御門のすぐ目の前で止まった。


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あきゅろす。
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