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スメラギ
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* * *



鈴率いる1-B1のドッチボールチームが結成されて三日。

一日目は軽く確認をした程度だったが、昨日からは練習の為に体育館も借りてチームを半分に分けて実際に試合をしてみたりと本格的な練習を始めた。とはいえ、チームの中で運動神経に自信があると言ったのは鈴と副主将となった狭山だけであり、昨日の試合もほぼ二人が主軸となってボールの投げ合いをしていたようなものだったのだが。

それでも、他のメンバーたちの活躍が全く無かった訳でもなく、鈴はそれをしっかりと見ていた。


「……うん、大体掴めてきたかな」
「…何が?」


てんてん、とドッチボールに使う比較的柔らかめのボールを鞠のように地面につきながら呟いた鈴に、隣にいた狭山が問う。

今日は残念ながら練習場所として体育館が確保出来なかった為、第三グラウンドの片隅を借りての練習である。夏を感じさせる陽射しに目を細めながら、鈴は集合しているチームメイトたちを見回した。


「何ってそりゃ、みんなの得意分野…かな」
「え?」


不意に鈴と目が合って首を傾げたのは、鈴より僅かに身長が高いかといった程度の、周囲から見ればやはり小柄な少年だ。

鈴は彼に向けてにこりと微笑むと、てんてんと手鞠のようについていたボールを、突然勢い良く投げつけた。


「うひゃぁっ!?」
「――例えばこうやって不意打ちでも反応出来るくらいに、前原(まえはら)君は反射神経に優れてる」
「へっ?」


手加減はしていたが、それなりの勢いをもって投げられたボールをすれすれで躱した前原は、目を白黒させながらも鈴を見る。


「本人はただ『ボールが怖いから』って思ってるみたいだけど、ドッチボールをするのにその反射神経は合ってると思うよ。チームの中でも、咄嗟の行動が一番速い」
「…そう…かな?」


前原の脇を通過したボールは、彼が咄嗟に身を翻さなければ胸のど真ん中に入っていた筈のものだ。

彼が避けた事によって地面を転がったボールは、デューイがパタパタと飛んで回収に行き、再び鈴の手元に戻って来たところで鈴は話を再開する。


「みんなは自分の運動神経に自信がないみたいだし、『何も出来ない』って思い込んでるみたいだけど、昨日の動きを見る限りみんなそれぞれにちゃんと長所はある筈だよ。……っと」
「――うわっ!!」


言いながら、今度は完全に油断していたひょろりとした少年に向けてボールを投げる。

前原に向けて投げた時と同じように胸の中心を狙って投げたボールだが、彼は前原とは違い避けるのではなくそれをキャッチしようとするという反応に出た。


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