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スメラギ
2

飴色の真っ直ぐな視線に、雅弥は小さく笑った。


「髪とか触られるの、嫌じゃないんですか?」
「……どうして?」
「普通のスキンシップでは、髪なんて触らないんですよ」


なんて言いながら、雅弥は椿の髪を指先で梳いた。

そもそも友人たちは肩に触れる程度のスキンシップすらほとんどしないので、椿にはまずその感覚からよく分からない。

よく分からない…が、雅弥の指が自分に触れるのは特に嫌だとは思わなかった。


「嫌、だとは思わないよ」
「そうですか」
「嫌だって言ったら、止めたの?」


それはそれで、少し寂しいなと思う。彼との間には、軽く触れられるようなスキンシップがあった方がいい。

指先で椿の髪をさらさらと擦り合わせながら、雅弥はクスと笑った。


「そうですね、嫌だって言われたら流石に一旦は止めます。後で再開したいな、とは思いますが」
「どうして?」
「こんなに綺麗で触り心地がいい髪、他にありませんよ」


絹の糸よりも、つやつやでさらさらだ。そんな褒め言葉に、椿はぱちぱちと飴色の瞳を瞬かせた。

身じろぐと、指通りのいい髪はさらりと雅弥の指をすり抜ける。


「ずっと触っていたいくらい」
「えっと……、ありがとう?」


そんな風に微笑まれて、どう返していいのか分からない。

とりあえず褒めて貰えたようだったので曖昧にお礼を言うと、雅弥はまたクスクスと笑った。


「…でも、嫌じゃないからって他の人にほいほい触らせちゃ駄目ですよ」
「……他の人は、雅弥くんみたいにこんな風に触らないよ」
「それならいいんです」


するり、椿の髪を手櫛で梳いていた指先が離れる。

何となくその仕草を視線で追っていると、雅弥は何気ないように話題を変えた。


「椿さん、球技大会は何の種目に出るんです?」
「…あ、僕はバレーに」


先日、孝雪と交代した種目。椿としては、バスケットもバレーもどちらも授業でかじった程度の経験しかなく、どちらが得意だとはそういうものもない。

そういえば、種目が変わってからまだ一度もチーム練習には出ていないなぁ、と思う。委員会の仕事や、このような息抜きも大事だが、きちんと顔を出さなければ。

そんな事を思いつつ、椿は雅弥を振り向く。


「雅弥くんは、何の競技に出るの?」
「俺はバスケですよ」
「バスケ? そうなんだ……」


では、孝雪と変わらなければ直接手合わせが出来たかもしれないのか。それは少し、惜しい事をした。

目を細める椿に、雅弥が訊き返す。


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