スメラギ
7
何か言い訳をしようと、とりあえず友人たちを引き合いに出した。
「あ、うちのクラスは御門君と雅弥君が一緒にバスケだったんで、なんとなく二人も一緒なのかと……」
「あれ、御門はバスケなんだ?」
「え、あ、はい」
訊き返されて頷くと、孝雪はふーん、と呟いて何やら思案し始める。
孝雪は、何かと御門を気にかける……というかよくちょっかいをかけていると思う。一方御門の方も孝雪を気にしているようで、端から見ると仲が良いのか違うのかよく分からない二人だ。
御門がバスケだと確認し、何をするつもりなのだろうか。ゼリーを口にしながらその様子を見守っていると、孝雪が再び口を開く前に生徒会室のドアが開いた。
「……失礼します。書類を取りに来たんだけど……」
「あ、お兄ちゃん」
「鈴。今日はこっちに来てたんだね」
ファイル片手にドアを開けたのは、風紀委員長の椿だ。生徒会と風紀委員会の仕事は縁深い為、彼はよく生徒会室を訪れる。
鈴の姿を見付けて小さく微笑んだ椿に、玩んでいたティーカップを置いて孝雪が立ち上がった。
「書類はこっち。……ついでに全然関係ないお願いなんだけどさ、球技大会の出場種目代わってくれない?」
「あ、ありがとう。……って、え?」
机に置いてあったプリントの束を渡しながら含むように笑った孝雪に、椿はきょとんと飴色の瞳を見張った。
その様子を見守っていた鈴も、隣に座った翡翠と目を見合わせる。
「……孝雪はバレーだったよね? 何かあったの?」
「うん、ちょっとね。代わって貰って大丈夫?」
「僕は構わないけど……」
首を傾げながらも、それ程自分の種目には執着していないのか、椿は孝雪の言葉に頷いた。
孝雪はニヤリとスリーズの唇をつり上げ笑い、此方を振り返った。
「……そんな訳で、僕もバスケね。よろしく、翡翠」
「……まったく、お前は……」
「孝雪、そんなにバスケがやりたかったの?」
孝雪の心算が分かったらしい翡翠は呆れた声をあげ、事情の呑み込めない椿は不思議そうな瞳をする。
食べ終わったゼリーの皿を重ねながら、鈴は御門のことを思って苦笑いした。
(直接対決をお望み、って事か。……翡翠先輩と孝雪先輩のタッグ、うちのクラス大丈夫なのかなぁ?)
わざわざ種目を代わって貰ったのだ、孝雪は手を抜くなんてしないだろうし、翡翠もそれなりに本気でやるだろう。
バスケ組にも、真面目に練習しておくように伝えておかないと。鈴は肩をすくめる。
「御門君、どんな顔するでしょうね」
「……うん、その顔が見たいんだ」
愉しげに微笑んだ孝雪は、本当いい性格をしていると思った。
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