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スメラギ
6

* * *



「……鈴君ドッチボールになったんだ? ちょっと意外だね」
「そうですか?」


L.H.Rが終わって、その日の放課後。

今日は一度寮の部屋に戻って取ってきた昨夜作っておいたフルーツゼリーを手土産に、鈴はいつものように生徒会室を訪れた。

ひんやりと冷たいゼリーの中にはつぶつぶと果肉が入っており、段々とむし暑くなってきた近頃の気候には嬉しいおやつだ。

膝の上でゼリーを強請るデューイにスプーンを差し出しながら、鈴は先程クスリと笑った孝雪に視線を向ける。


「ドッチボールってちょっと運動苦手な子が多いイメージだから。……あぁでも、鈴君小柄だし、本気でやるなら有利っぽいかもね」
「……」


ソファーに座った鈴の旋毛を見下ろしながら、孝雪はからからと爽やかに笑う。

それは『的』が小さいという意味や、避ける為の小回りが効くという意味でなのだろうが、なんとなく微妙な気分になってしまうのは何故だろう。そういった意味では確かに、小柄な鈴はバスケやバレーよりドッチボールの方に適性があるのかもしれないが。

微かに眉を寄せた鈴の蜂蜜色の髪を、隣に座った翡翠がふわふわと撫でる。顔を上げると、漆黒の瞳が優しげに微笑んだ。


「……応援する」
「ありがとうございます。……でも先輩、自分のクラスは?」
「うちはほとんど、ドッチボールは諦め気味だ」


苦笑いして首を振る翡翠。孝雪が“意外だ”と言ったのも、自分のクラスのチーム編成を思い浮かべていただったのかもしれない。

その孝雪が、スプーンを置いて口を開く。


「一回戦敗退か、良くても二回戦に行けるかってくらいじゃないかな。……他も似たり寄ったりなクラスはあるし、その辺りとぶつかれればワンチャンってトコ」
「はぁ…」
「ドッチボールは大穴なんだよ。弱いチームも多いけど、それを狙い目に強いチームを編成してくるクラスもある。大体弱いトコと強いトコが7:3か6:4くらいの割合かな。……ごちそうさまでした」
「あ、はい」


付け足したように言いながら、しっかりと両手を合わせてごちそうさまとジェスチャーする孝雪。

ゼリーの作成者として頷いて応えながら、鈴も自分の分のスプーンを口元に運んだ。


「先輩たちはどの競技に出るんですか?」
「……俺はバスケだ」
「僕はバレーの予定だよ」
「あ、二人違うんですね」


生徒会二年生は案外仲が良いので、同じ種目に出るのかと思っていた。

そう言うと、何故か翡翠は微かに眉を寄せ、孝雪はけらけらと笑った。


「そんなベッタリはしてないって」
「……鈴にそう言われると、何となく微妙な気分だな」


笑っている孝雪はともかく、渋面の翡翠に何となく申し訳ない気分になってしまう。


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あきゅろす。
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