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スメラギ
5

「経験者は半分以上、……一応感じは掴めてる、って思ってもいいよね?」
「え……」


にこ、と微笑んで訊けば、戸惑ったような顔をするクラスメイトたち。

運動自体に自信がないから、素直に頷き難いのだろう。それは何となく察したが、鈴は敢えてそれに配慮する事を放棄した。

最初から『出来ない』と思っていたら、出来る事も出来なくなる。まずは、運動が苦手な彼らのイメージトレーニングからだ。


「僕はルールも何となくしか分からないから、経験者に色々教えて欲しいな。ね?」
「え……あ、うん……」


近くに居た、一際自信のなさげな生徒を見上げて言えば、戸惑いがちに頷かれる。

他人に教える事で、改めてのルール確認にもなる。もう一人、隅の方で存在を消そうとしていた生徒にチームの未経験者にルールを教えるように頼み、鈴は改めて彼らを見渡す。


「……さて、僕らも一応チームだから、リーダーというかキャプテンを決めた方がいいと思うんだけど……」
「それは永峰でいいんじゃねーの」


此処まで仕切っておいて。と苦笑いしながら言ったのは、鈴の他にもう一人、運動神経に自信がある、と答えた少年だ。

彼は一応、鈴が何をしようとしているのかを察しているようだ。このメンバーに自信を身に付けさせようとは、大したものだと笑う彼を見て、鈴はにこりと周囲に微笑みかける。


「そう? みんなもそれでいいかな?」
「あ、うん」
「永峰君がリーダーで、いいと思う……」
「そっか、ありがとう。よろしくね」


ぺこりと頭を下げ、見やるは鈴をリーダーに、と推した少年だ。


「じゃあ、副リーダーは狭山(さやま)君に頼んでいいかな?」
「ん?」
「みんなもいいと思うよね?」
「あっ、うん」
「うん」


不意に話の矛先を向けられ、彼が目を見張っているうちにチームメイトたちに確認を取ってしまう。

運動に自信のない彼らにとって、例え副と付いていてもまとめ役に就くのは困るのだろう。推薦と言う名の生け贄となった狭山は、ガリガリと頭を掻いて鈴を見やった。


「……ったく、大したリーダーだよ」
「ふふ、よろしくね副リーダー」


不承不承ながらも狭山が頷くと、鈴はクスクスと笑って応えた。

晴れてチームのリーダーと副リーダーが決まった所で、鈴は再びメンバーを見渡す。


「さて……、最初に言っておくけど、僕は意外とスパルタだよ?」
「……え」
「え……」
「……そんな気はしてた」


戸惑う少年たちの中で、ぽつりと呟くのは副リーダーの狭山だ。

おろおろとする彼らの視線を、パンパン、と柏手を打つ事で此方へ集め、鈴はきっぱりと宣言する。


「やるからには、勝つよ。どうせなら優勝を狙おうか」


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