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スメラギ
4

「…でもまぁ、ドッチボール選んでる中にも運動出来る奴はいるし、作戦が大事だと思うよ。頑張って」
「えぇ…、そりゃ頑張るけどさぁ」


やるからには勝ちを目指すのは当然だ。けれど、まるで他人事のように無責任に応援されると、素直にそれを受け取る事が出来ない。


「僕だってドッチボール初心者なんだけど……」
「大丈夫大丈夫、鈴無駄にハイスペックなんだから、どうせ何回かやったらすぐコツ覚えるでしょ」
「……他人事だと思って」
「褒めてるのに」


ひらひらと手を振って笑う雅弥は「褒めている」と言うが、鈴はさっぱり褒められている気がしなかった。

そうこうしているうちにクラス全員が黒板に名前を書き終わり、若干の人数調整を話し合いとじゃんけんという平和的手段で行ってから、それぞれの出場競技が決定した。

鈴と友人たちは当初の希望通りに、ドッチボールとバスケットボールに出場決定だ。


「みんなあとでチームのメンバーを確認しておけよー。練習でグラウンドや体育館を使いたいなら、早い者勝ちの申請制だから早めに先生に言うように。…じゃあ、今日はここまで!」
「センセー、さようなら!」
「さよーなら!」


相変わらず一斉号令が妙なテンションの1-B1だ。

笑顔の的井教諭が去った後の教壇に上ると、鈴はパンパンとよく通る音で手を叩いた。


「ドッチボールの人、全員集合!!」


鈴のやや高めの声の号令に、運動にはあまり自信のないらしいメンバーの肩がビクッと揺れる。

それでも比較的仲の良いこのクラスは、鈴の声を無視する事なくメンバー全員が教壇の前に集まった。


「さて、僕らは晴れて球技大会の種目がドッチボールに決まった訳ですが。…とりあえず、みんなよろしくお願いします」


ぺこりと鈴が頭を下げると、他のメンバーたちもぱらぱらと頭を下げる。

彼らの顔を見回し、鈴はさっそく本題に入る。


「……この中で、割と運動神経に自信がある人」


全体に向かって問いかけるが、彼らはお互い窺うように顔を見合わて、ほとんどの者が首を振った。

鈴を入れて八人というメンバーの中で、手が上がったのは鈴を入れずに一人だけ。

続けて鈴はもう一つ質問をする。


「じゃあ、正直、運動神経には自信がない人」
「…ぁ、はい…」


そろそろと申し訳なさそうに、残り六人の手が上がる。

…分かってはいたが、なかなか前途多難そうだ。


「……僕は運動神経には割と自信がある方だけど、ドッチボール自体は初心者だよ。ちなみにみんなは経験者?」
「あ、僕は中等部の時もドッチだった」
「俺、去年までは卓球だった…」


経験者の数は、チームのうち六人らしい。

ふむ、と鈴は小さく頷く。


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