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スメラギ
2

「…どれも一応ルールは知ってるけど、実際やった事はないなぁ」
「えっ?」
「マジか」


首を傾げながら呟くと、雅弥と御門がそれぞれ驚いたように此方を見下ろしてくる。

そんなに驚くような事だろうか。


「……卓球はともかく、他は多人数じゃないとやらないでしょ?」


僕、『学校生活』するのって高校が初めてだし。

そう言うと、二人はそれぞれ何とも言い難い表情になった。

笑っていいのか、慰めたらいいのか、同情すればいいのか。迷ってくれる優しい友人たちに笑みを返し、鈴は黒板に向き直る。


「…どれも出来ない事はないと思うけど、どれにしようかなぁ…」


雅弥と御門がバスケだというのなら、彼らと一緒でもいいだろうか。

そう思っていると、その彼らが神妙な顔をして告げた。


「……バスケは止めとけ」
「そうだね、バレーも駄目だ」
「……、二人とも」


揃って、鈴の頭頂部を見下ろしながら言った台詞に、何とも言えない心地を覚える。

……確かにそれらの競技は、それなりの高身長を要求される競技だと記憶しているけれども!

盛大に拗ねたい気持ちを抑え、鈴はゆるゆると首を振る。

…まぁ、既にこのクラスではある程度バスケやバレーのチームは定まっているかもしれないし、無理に割り込む事もないだろう。


「……と、すると、どうしようかな」


身長によって弾かれてしまった選択肢を外すと、残るはサッカーと卓球とドッチボール。この中から、敢えて選択すると言うのなら……。


「じゃあ、ドッチボール、やってみようかな……」
「え、マジで?」


呟くと、御門がぱちりと瞬く。

驚いている彼に軽く首を傾げつつ、鈴は選択理由を口にする。


「…だって、ドッチボールが一番『学校生活』っていう機会じゃないとやらない競技な気がするしね」
「あぁ…、言われてみれば」


他の競技は部活動として存在しているが、ドッチボール部というのは灯燈には存在しない。

球技大会、という行事の機会でもなければ、ドッチボールという競技を真剣に行う事もないかもしれない。


「……他の競技はこの先別の機会にやる事もあるかもしれないけど、ドッチボールは多分今しかやらない。よし、ドッチボールにしよ」
「まぁ、確かにそれは一理あるかもしれないね」


頷いた鈴に、雅弥が笑う。

けれど、御門は微かに眉を寄せて何か言いたそうに口を開きかける。


「…でもさぁ、ドッチボールって…」
「――よしっ、10分経ったぞ! みんな出たい競技は決まったか?」


言いかけた御門の言葉は、ちょうど10分経って声をあげた的井教諭によって書き消される。


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あきゅろす。
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