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スメラギ
二週間前

今でも繰り返し、何度も何度も、反芻してしまう問いがある。

もう問い掛ける相手はいないのに。応える声がある筈がないと、知っているのに。

それを訊いたところで、何も変わらない。今はもう、彼は此処には居ない。

もう二度と、鈴の側には戻らない。

それでも、鈴は繰り返しその問いを口にする。思い描く。


心の中の、もう居ない“弟”の笑顔に向かって。


『――ねぇ、キミは本当に……』


しあわせ、だった?



* * *



ゆっくりと、重たい自らの頭をもたげる。

開いた視界に映るのは、磨き上げられた不規則な木目と、見慣れた使い魔の翼。


「……あ」
「あ?」


思わずぽつりと漏れた声に、後ろから訊き返すような応えが返る。

鈴は寝惚けた頭をゆっくりと振り、教室の様子を見回した。


「ホームルーム、始まってる」
「そうだね。おはよう、鈴」


まだぼんやりとした鈴の言葉にクスクスと笑いを堪えながら、後ろの席に座っている雅弥が応えた。


「…おはよう、雅弥君。僕、いつから寝てたっけ?」
「五限の途中からじゃなかったっけ。休み時間と六限はまるまる寝てたよ」
「そっか。…あぁ、よく寝た」
「そりゃ、よく寝ただろうよ」


寝起きでまだ流暢に口が回らないのか、ワンテンポズレた会話に雅弥がまたクスクスと笑う。

大欠伸をした鈴に気付いたのか、教壇に立っていた1-B1の担任教師、的井大紀教諭が振り返る。


「おっ、永峰起きたのか。ちょうど良かったな、今から再来週の球技大会の出場種目を決めるぞー」
「…球技大会?」


唐突な単語に、鈴は持ち上げたばかりの瞼を緩く二、三度上下させた。


「種目はバスケ、バレー、サッカー、ドッチボールに卓球だ。適当にそれぞれ話しあって決めてくれ。10分くらい後に一回まとめるぞ」


生徒同士の話し合いに任せる、と傍観姿勢の的井教諭に、生徒たちはそれぞれ出たい種目を相談し始める。

俄かに騒がしくなった教室に、鈴がゆるゆると周りを見回していると、離れた席から御門がやって来た。


「お前らはどれに出る?」
「んー、中等部の時はバスケだったっけ? 俺は同じでいいかなぁ、と思ってるよ」
「あぁ。んじゃ、俺も一緒でいいかな」


《クラス》と成績順、という組分けである以上、クラスの面子は毎年ほぼ同じだ。

誰がどのスポーツが得意で、誰が運動自体が苦手か。そんな事が大体分かっているので、種目分けもほぼスムーズに終わりそうだ。

そして、そんな通例の通じない“外部生”、鈴であるが。


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あきゅろす。
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