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スメラギ
5

「そうそう、指環なんだけど、鈴の分は今此処で渡すよ。ホントは新入生には入寮日に渡したんだけど、鈴はちょっと遅くなっちゃったからね」


完全に説明を翡翠に丸投げ姿勢だった樹が、ふと気付いた様に言った。

机の下からごそごそと一つの小さな箱を取り出す。


「何か結婚指輪渡すみたいだね」
「三親等の血族は法律的に結婚出来ないんだけど」
「…そこを真面目に返すなよ」


にこにこと嬉しげに言う樹に、真顔で鈴が返す。そんなやりとりに、翡翠は反射的に突っ込んだ。

というか、親戚同士という点の他に同性だ。


「鈴はつれないなぁー。まぁとにかく、これが指環だから、無くさないように気を付けるんだよ」


言いながら箱の蓋を開き、机越しに差し出す。

受け取った鈴は早速そのミスリルの指環を取り出し、翡翠のように中指にはめてみた。……が。


「……伯父さん、いくらなんでも緩いんだけど……」


体格同様、幼子のように小さく可愛らしい指に、あきらかに大きすぎるサイズの指環。

多少緩いくらいなら余裕があっていいが、油断したら直ぐに抜けてしまいそうなくらいそれはぶかぶかだ。


「あれー、鈴の指、そんなに細かったんだ? 人差し指でも駄目かい?」


樹に言われるままに、ゆるゆるの指環を中指から人差し指に移してみるが、結果はほとんど変わらなかった。
鈴の場合、人差し指と中指の太さはほぼ変わらないようだ。


「うー、どうするのこれ。無くさないように、って言ったってこんなんじゃ直ぐにすっぽ抜けちゃいそうだよ…」


意味もなく指環をはめたり外したりを繰り返しながら、鈴が困ったように言った。繰り返すその作業の途中、指環がほとんど指に触れていないのが状態の悲惨さを顕著に表している。

その様子を横で見ていた翡翠は、正面で首を捻る樹に言う。


「サイズは測らなかったんですか?」
「うーん、平均のサイズで大丈夫だと思ったんだけどね…」


そもそも身長が平均でないのに、何故に無条件で平均だと思い込んでしまったのか。翡翠は呆れた様にため息をついた。


「…仕方ないな…。永峰、これを使え」
「ふえ?」


未だはめて外してを繰り返していた鈴は、翡翠が差し出したそれに目を丸くした。

細い、シルバーのネックレス。たった今、翡翠が目の前でその首から外した物だ。


「これに指環を通して、首にかけておけば無くさないだろう」
「え、でもこれ会長さんの…」
「別にこんな物の一つや二つ気にしないでいい」


翡翠は他にもアクセサリーを着けているが、その一つ一つがそれなりの価値のある物だと鈴には分かる。勿論、差し出されたこのネックレスも。


「えっ…」
「ほら、指環貸せ」


戸惑う鈴から翡翠は指環を取って、鎖に通した。そのまま、腕を伸ばして鈴の首にネックレスをかけてやる。


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