スメラギ
放課後ティーパーティ
* * *
今日のおやつは、苺のタルトだ。
昨夜のうちに焼いておいたタルトを入れた化粧ボールの箱をデューイに持たせ、鈴はてこてこと生徒会室のある南棟へ向かう。
入学して一週間、放課後の生徒会室へ向かうのはこれが初めてだ。
生徒会室や会議室、各委員会委員長室などを集めた南棟は、元よりプラチナクラス以上でなければ立ち入る事が出来ない。一年生首席である鈴はミスリルクラスだが、生徒会室や委員長室のある四階に上がるには更に特別な許可がいるらしい。
なので理事長である伯父の樹に許可が下りるよう申請を頼んでおいたのだが、それが何故か一週間もかかってしまった。理事長室への入室許可は一日で下りたというのに。…サボっていたに違いない。
腹いせに理事長室にタルトと一緒にビックリ箱を放置してきたので、とりあえず鈴の気は晴れている。
「えーっと…、此処に<指環>を翳せばいいカンジなのかな?」
南棟の入り口。立ち入れる生徒が限られている為か、辺りに人気は無かった。
此処へ入る所を見られていたらまた面倒な事になるだろうから(まぁ、喧嘩上等だが)、ちょうど良かったかもしれない。
セキュリティーシステムらしい黒いパネルに首から下げた<指環>を翳せば、カチリと音がして大きな扉のロックが外れた。
「どこもかしかも、お城とかお屋敷みたいな建物だよねぇ…」
重い扉を押し開けつつ、鈴はしみじみ呟いた。たかが学校にしては、警備が厳重過ぎないかと思う。
中に入ればいずれかの委員会の役員であろう数人の生徒がいたが、幸い鈴には気を止めていないようだった。てこてこ廊下を進み、一番奥のエレベーターに乗り込む。
「…で、此処でも<指環>と。…いくら《ウィザード》の学校だとはいえ、これじゃ窮屈にならないのかな…?」
鈴にとっても、これではこれまでと変わりがない。学校とはもっと、気楽なトコロではないのだろうか。
むう、と考え込む間にエレベーターは四階へ到着し、鈴は生徒会室を探し始める。…廊下の途中で風紀委員長室を見つけたので覗いてみたが、残念ながら兄は不在だった。
「…ぉ、あった、生徒会室!」
鈴が叫ぶと傍らのデューイも応えるように、きゅっ!、と鳴いた。…目的地に着いたらタルトが食べられる事を分かっているのだろう。
屋内だというのに聳え立つような大きな扉の前に立ち、コンコンとノックをする。
「…はい、どうぞ?」
返ってきた声は、知っている翡翠のものでも孝雪のものでもなかった。
ぱちぱちと鈴は幾度か瞬きしたが、入っても大丈夫なようなのでキィと細く音がする扉を押した。
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